椿は、日本原産の常緑喬木で一重や八重、斑などの花をつけます。
7世紀後半から8世紀後半(奈良時代末期)にかけて成立したとされる日本に現存する最古の和歌集である『万葉集』にも、椿が含まれた歌が9首に詠まれています。
デザインにおける椿文(つばきもん)
椿(つばき),Photo by David J. Stang, CC BY-SA 4.0 , via Wikimedia Commons,Link
室町時代には、椿は文様(模様)として用いられています。
例えば、木を用いて木地を成形し、文様を彫り、その上に漆を塗って仕上げた鎌倉彫の笈(僧が物を入れて背負う箱)や香合(香を収納するふた付きの容器)などにみられます。
染織品では、室町時代末期から安土桃山時代(1573年〜1603年)にかけて流行した模様(文様)染めで、日本の染め物を代表するものともいえる「辻が花(つじがはな)」に多くみられます。
辻が花に表現される草花の模様には、椿や菊、藤などを図案化した定型的な模様が多く用いられています。
「染分地椿文様辻が花裂幡」も、椿が表現されている辻が花の遺品です。
関連記事:幻の布と言われる辻が花(つじがはな)の特徴や歴史について
江戸時代には、能装束に椿を主題としたデザインが多く、友禅染めされた小袖にも他の草花と共に表現されてきました。
明治時代以降も、絵絣や銘仙などにも好んで用いられてきました。
ただ、椿の花は、花全体がポトリと落ちるため、武家では「首が落ちる」というイメージと繋がり、忌み嫌われる側面があったため、家紋としての活用は非常に少ないです。