黄連(おうれん)

染色・草木染めにおける黄連(おうれん)。黄連(おうれん)の染色方法や薬用効果について


黄連おうれん(学名Coptis japonica Makino)は、キンポウゲ科オウレン属で常緑多年草の薬用植物です。

葉には光沢感があり、セリに似ており、早春に根茎こんけいから芽を出し、3〜4月ごろに根元から高さ10cmほどの花茎かけいを出し、数個の白い花を付けます。

地下茎ちかけいはやや太く、中は黄色で横にのび、たくさんの根を出します。

Coptis japonica var. anemonifolia 2

Coptis japonica,Qwert1234, CC BY-SA 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0>, via Wikimedia Commons,Link

9〜11月頃に、根茎こんけいを採取して細い根を除いて乾燥させたものが生薬の「黄連おうれん」です。

黄連おうれんの語源は、根茎こんけいが節状に連なり、横断面が鮮やかな黄色であることから「黄連おうれん」と呼ばれる説があります。

染色・草木染めにおける黄連(おうれん)

黄連(おうれん)

黄連(おうれん)

黄連おうれんは、薬用としての効能が知れていましたが、染草そめくさとしても利用されていました。

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養老令ようろうれい注釈書ちゅうしゃくしょとして、9世紀中頃(貞観年間じょうがんねんかん(859年~877年頃成立)に編纂へんさんされた『令集解りょうのしゅうげ』には、「穴云。此進黄連者。染草料也。」とあり、この頃から染色にも用いられていたことが考えられます。

黄連(おうれん)の染色方法

黄連おうれんの黄色い根茎こんけいは、直接染料としても染まりがよく、色彩は美しい黄色になります。

1kgの絹糸を染めるために、100gの黄連おうれん根茎こんけいを使用した場合の染色方法は以下のような流れです。

①細かく刻んだ黄連おうれん根茎こんけい100gを10リットルの水に入れて熱し、沸騰してから30分間熱煎して煎汁をとり、染液にする

②染液に1kgの糸を浸してかせをよくかえしながら、染めムラにならないように注意する。

③染液が冷えたら堅く絞って天日の元乾燥させる

④染液にまだ色素が残っていれば、再び染液を熱して乾いた染糸を再び浸す

⑤2番液も取れるので、濃く染める場合は中干しした糸を浸して、染液が冷えるまで浸す

③3番液も取れるが、薄くなるので、別の糸の下染などに活用する

Coptis japonica、根茎(こんけい),5026696、黄蓮・丹波市立薬草薬樹公園

Coptis japonica、根茎(こんけい)

黄連の薬用効果

黄連おうれん根茎こんけいを採取して細い根を除き、乾燥させたものが生薬の「黄連おうれん」です。

黄連おうれんは、中国最古の薬物書である『神農本草経しんのうほんぞうきょう』では「王連・・」として上品じょうほん収載しゅうさいされ、古くから消炎、止血、瀉下しゃげ(下痢)などの薬として使用されてきました。

神農本草経しんのうほんぞうきょう』の特徴として、1年の日数と同じ365種類の植物・動物・鉱物が薬として集録されており、人体に作用する薬効の強さによって、上薬じょうやく(120種類)中薬ちゅうやく(120種類)下薬げやく(125種類)というように薬物が3つに分類されている点があります。

上薬・中薬・下薬は、上品・中品・下品ともいいますが、王連おうれん(黄連)は、上品に収録されています。

日本では奈良時代に中国から黄連おうれんの知識が伝わり、自国に生育するセリバオウレン(学名Coptis japonica Makino)と同じものと考え活用されてきました。

江戸時代には、栽培も行われ、中国に輸出されるようになります。

黄連おうれんの成分としては、ベルベリン、パルマチン、コプチシ、マグノプロリンなどが含まれています。

主な薬効として、苦味健胃薬くみけんいやく(苦みによって胃の機能を促進させる生薬のこと)や止瀉薬ししゃやく(下痢止めの薬)などが挙げられます。

【参考文献】『月刊染織α1985年8月No.53』


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