染色・草木染めにおけるモッコク(木斛)


モッコク(学名:Ternstroemia gymnanthera)は、モッコク科モッコク属の常緑樹で、樹高は6m〜10mを越えるほどにも成長します。

病虫害に強く、葉に光沢があり美しく、樹形が整うため、公園の樹木や、庭木として古くから武家屋敷などに植えられてきました。

花の香りがラン科の石斛せっこくに似た木という意味で、江戸時代初期に木斛もっこくと名づけられました。

モッコク(木斛もっこく)の材はきめが細かくで細工物に向いており、堅くて美しい赤褐色せっかっしょくをおびる材を建材やくしなどの木工品の素材として用いられています。

木材が赤いため、「アカギ」という別名もあります。

モッコク(木斛)Ternstroemia gymnanthera kz1

モッコク(木斛)Ternstroemia gymnanthera,Krzysztof Ziarnek, Kenraiz, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons,Link

樹皮は、繊維を茶色に染める染料として利用されてきました。

染色・草木染めにおけるモッコク(木斛)

モッコク(木斛もっこく)は、江戸時代に人気の高かった庭木として知られ、アカマツ、イトヒバ、カヤ、イヌマキと共に「江戸五木」として親しまれていました。

また、モチノキ、モクセイと共に「三大庭木」としてこれらを庭に採り入れると、景色にまとまりがでるとされます。

環境をあまり選ばず育ち、ゆっくり成長するので比較的扱いやすく、樹齢を重ねるごとに風格を増していきます。

直立した幹から、放射状に枝をたくさん伸ばしますが、大きくなると剪定せずに放任しても樹形を整えやすいこともあり、和風には欠かせない高級な雰囲気をもたらすことのできる「庭園の定番」のような樹木です。

花はクリーム色をしていて、6月~7月頃の初夏に石斛せっこくという洋ランに似た香りの花を咲かせます。

モッコク(木斛)の花,Ternstroemia gymnanthera flowers 20130628(1)

モッコク(木斛)の花,Ternstroemia gymnanthera flowers,PD files, Public domain, via Wikimedia Commons,Link

花の後にはツバキの実を小さくしたような実ができ、9月~11月頃には緑色だった実が熟し、皮がパックリと割れます。

モッコク(木斛)の実,Ternstroemia gymnanthera

モッコク(木斛)の実,Ternstroemia gymnanthera,KENPEI, CC BY-SA 3.0 <http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/>, via Wikimedia Commons,Link

割れた実から見える種子はきれいな紅色で、次第にこぼれ落ちていきます。

四季を通じて、いくつもの表情を見せてくれるところもモッコク(木斛もっこく)が庭木として人気である理由です。

染色・草木染めにおいては、モッコク(木斛もっこく)の樹皮が染料として利用されます。

モッコク(木斛)は樹皮にタンニンを多く含む

樹皮にはタンニンを多く含んでおり、茶色~赤褐色の染料として用いられました。

木灰から作る灰汁あく石灰せっかい媒染ばいせんに利用することで、茶色に染められます。

関連記事:染色・草木染めにおける灰汁(あく)の効用と作り方。木灰から生まれる灰汁の成分は何か?

タンニンを多く含んでいるため、鉄媒染を利用すると、黒く染めることができます。

八丈島では、布の染色に利用されたり、魚介類を捕獲するために用いる網である魚網ぎょもうの染色にも用いられました。

モッコク(木斛もっこく)に似た名前の植物に「浜木斛はまもっこく」がありますが、これは「車輪梅しゃりんばい」の異名で、大島紬や久留米紬などの茶染めに使用されてきました。

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