家屋文とは、家屋を模様化(文様化)したもので、古くは弥生時代後期頃(1~3世紀)に製造されたとされる「袈裟襷文銅鐸」に高床切妻の建物とされるものが描かれています。
古墳時代前期にあたる4世紀ごろに作られたとされる円鏡の「家屋文鏡」にも建物の模様(文様)が描かれており、古代建築を知る上で重要な史料であるとされています。
デザインにおける家屋文(かおくもん)
佐味田宝塚古墳出土 家屋文鏡レプリカ,Saigen Jiro, Public domain, via Wikimedia Commons,Link
染織品では、奈良県斑鳩町の中宮寺が所蔵する飛鳥時代(7世紀)に作られ、日本最古の刺繍遺品として知られる「天寿国繡帳」(天寿国曼荼羅繍帳)があります。
「天寿国繡帳」に表現されているデザインの中には家屋がみられ、7世紀中頃の染色技術や服装、仏教信仰などを知るうえで貴重な遺品とされています。
天寿国繡帳(てんじゅこくしゅうちょう)天寿国曼荼羅繍帳(てんじゅこくまんだらしゅうちょう)Tenjyukoku embroidery,TOKYODO, Public domain, via Wikimedia Commons,Link
染織品である「屋形錦御衣」には、全面に家屋文が描かれています。
江戸時代の小袖には、藍の濃淡で染められた(茶屋染された)帷子である茶屋辻に見られる風景文(風景模様)や、『源氏物語』をテーマとした絵柄を小袖に表現されたものなど、数々のデザインのなかに家屋文が表現されています。
沖縄の紅型染にも家屋文が多く題材とされたり、絵絣には大胆なデザインの家屋文が用いられていました。