色合い」カテゴリーアーカイブ

染色・草木染めにおける丁子(ちょうじ)。チョウジの特徴や歴史について

染色・草木染めにおいて、丁子ちょうじが古くから使用されてきました。

日本には奈良時代にはすでに中国経由で到来していて、正倉院御物の中には当時輸入された丁子そのものが残っています。

丁子の歴史や幅広い用途について、詳しく紹介していきます。

続きを読む

蓼藍(タデアイ)

正藍冷染(しょうあいひやしぞめ)とは。正藍冷染(しょうあいひやしぞめ)の染色技法について

宮城県栗原郡栗駒町に伝わる「正藍冷染しょうあいひやしぞめ」という技法は、どの地方においても見られない特徴的な藍染です。

一般的に行われている藍染は、藍甕あいがめのなかに、アルカリ分の木灰の上澄み液である灰汁あくを入れ、蓼藍たであいの葉を発酵させて作った原料のすくもと小麦の外皮を煮出した糖分などを混ぜ、人為的に加温して発酵させます。 続きを読む

染色・草木染めにおける消石灰(しょうせっかい)

消石灰しょうせっかい(Slacked lime)は、白色に乾燥したアルカリ性粉末で、水酸化カルシウムの慣用名です。

水酸化カルシウムは、化学式 Ca(OH)2 で表されるカルシウムの水酸化物です。

消石灰しょうせっかいは、生石灰せいせっかい(酸化カルシウム)に適量の水を加えて処理(消化)したものです。

消石灰しょうせっかいは、水にわずかに溶け、水溶液は石灰水とよばれ、強アルカリ性となります。

空気中の二酸化炭素を吸収して炭酸カルシウムになるため、消石灰しょうせっかいを保存する際にはできる限り密閉することが、品質を保つうえでは大切です。 続きを読む

染色・草木染めにおけるハゼノキ(櫨)

ハゼノキ(ヤマハゼ)は、ウルシ科ウルシ属の落葉小高木で、学名はToxicodendron succedaneumです。

黄色の心材しんざい(樹木を輪切りにしたときに、中心部分にある色の濃い部分の材木)が、染料になります。

本来、中国の黄櫨こうろは、ウルシ科の別属の木ですが、平安時代にまとめられた三代格式さんだいきゃくしきの一つである『延喜式えんぎしき』には、「採黄櫨一人」との記載があることから、日本で自生していたハゼノキ(ヤマハゼ)も利用されていたようです。

染色・草木染めにおけるハゼノキ(櫨)

ハゼノキ(ヤマハゼ)の心材しんざいを染料として使用し、明礬みょうばん媒染で黄色、灰汁あく媒染でやや赤みを増し、石灰水では赤茶色、鉄塩による媒染で真黒まっくろに発色します。

ネムノキ(合歓木)で染色した菜の花色

染色・草木染めにおけるネムノキ(合歓木)。ネムノキ(合歓木)の薬用効果について

ネムノキ(学名Albizia julibrissin)は、マメ科ネムノキ属で本州、四国、九州、琉球、朝鮮半島、中国の暖帯や温帯に広く分布しています。

葉は、1枚ずつが鳥の羽にそっくりな形をしており、葉柄の両側に小さな葉がいくつも連なっています。

ネムノキ(合歓木),Albizia julibrissin 'Boubri' 2020-07-18 01

ネムノキ(合歓木),Agnieszka Kwiecień, Nova, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons,Link

このような形状の葉は「羽状複葉うじょうふくよう」と呼ばれます。 続きを読む

【媒染剤】染色・草木染めにおける鉄漿(てっしょう)

鉄漿てっしょうは、古くから使用されてきた鉄媒染剤の一つです。

鉄漿てっしょうは、中国名で、古代において、黒染めの方法として中国から伝えられたものと考えられます。

タンニンに反応すると黒く染まるため、鉄漿てっしょうを、タンニンが多く含まれる五倍子ごばいしとともに用いたものがいわゆる「お歯黒」になります。 続きを読む

馬酔木(あせび)の染色,アルミ媒染で赤茶色に染まる色合い

染色・草木染めにおける馬酔木(あせび)。歴史と馬酔木の毒性について

馬酔木あせび(学名 Pieris japonica D.don)は、ツツジ科の常緑低木で、日本固有の植物です。

属名のPierisは、ギリシャ神話の文芸、芸術、音楽をつかさどる神の名前に由来があります。

馬酔木あせびという漢字が当てられますが、中国名ではなく日本でつけられた名称です。

大体は2〜3メートルくらいの樹高ですが、大きいものだと5メートルほどにもなり、庭木としても使用されます。

3月から5月ごろ、小枝の先にスズランのような白色で、ツボ状の形をした花が密集してたくさん咲くのが特徴的です。

Pieris japonica Prelude 4zz

馬酔木,あせび,Pieris japonica,Photo by David J. Stang, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons,Link

馬酔木あせびは、園芸品種も様々あり、薄紅色の花を咲かせるアケボノアセビ、花の穂が長いホナガアセビ、葉にまだら模様が入っているフクリンアセビなどがあり、江戸時代終わりごろから欧米などの海外でも観賞用として栽培されるようになっています。

Pieris japonica 'Katsura' Pieris japoński 2019-04-06 01

馬酔木,Agnieszka Kwiecień, Nova, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons,Link

続きを読む

藤の葉で染色,銅媒染で金茶色に染めた色合い

染色・草木染めにおける藤(ふじ)

ふじ(学名Wisteria floribunda)は、日本の固有種で、マメ科フジ属のつる性落葉木本もくほんです。

藤の花が咲く時期は4月中旬~5月頃で、葉の展開からやや遅れて開花し、枝の先端に多数の蝶形花ちょうけいかを付けた花序かじょが垂れ下がります

藤棚ふじだなの伸びすぎた枝葉を剪定せんていした時に、その枝葉を染色に利用することもできます。 続きを読む

桃、灰汁・アルミ媒染、洗柿色(あらいがきいろ)

染色・草木染めにおける桃(もも)

桃(もも)(学名Prunus persica)は、バラ科スモモ属の落葉低木から小高木(樹高2m~3m)で、食用や観賞用として世界各地で品種改良されて栽培されています。

桜は、中国が原産といわれ、ヨーロッパへは紀元前1世紀ごろに渡来し、日本においても『古事記』や『日本書紀』に記載があり、果樹としての栽培は江戸時代になったから盛んになったとされています。

3月下旬から4月頃にピンク色から白色の花を咲かせ、八重咲種など観賞用の品種も古くからあり、果実がは6月〜7月ごろに熟します。

桃(もも)(学名Prunus persica),Prunus persica (200804)

桃(もも)(学名Prunus persica),E-190, CC BY-SA 3.0 <http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/>, via Wikimedia Commons,Link

続きを読む

桜染め,アルミ媒染

染色・草木染めにおける桜(さくら)

桜は、古くから人々に親しまれてきました。

7世紀後半から8世紀後半(奈良時代末期)にかけてに成立したとされる日本に現存する最古の和歌集である『万葉集まんようしゅう』には、4,500首以上歌が集められていますが、桜を詠んだ歌が非常に多く、「桜の花」、「桜花」、「山桜」、「山桜花」などとあり、40首が収められています。

ただ、桜が染色に用いられるようになったのは近年になってからと考えられます。

江戸時代には「桜鼠さくらねずみ」など色名がありますが、桜自体を使用したわけではなく、桜色がかった鼠色ねずみのことを指していると考えられます。 続きを読む