ヨーロッパの花の中でも、古くから観賞用として人々に愛され、美術や工芸の模様におけるモチーフとされてきたのがバラ(薔薇)です。
日本においても古くからバラが栽培されていたとされ、バラを描いた美術や工芸品も残っています。
平安時代には、中国からコウシンバラ(庚申薔薇)が渡来していたと考えられており、「古今和歌集」や「枕草子」、「伊勢物語」や「源氏物語」などから、バラが観賞されていたことがわかります。
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歴史的には、紅花のように花を染料にして染めことは行われてきましたが、バラの花びらを使った染色というのは、ほとんど行われなかったと考えられます。
一般的には花びらは染まりにくく、たとえ染まったとしてもすぐに色あせてしまうものとされてきました.
ただ、花びらを使用した染色において、バラの花が活用されることがあります。
目次
染色・草木染めにおけるバラの花
バラの染色方法について、いくつか具体的な工程の例を紹介します。
バラの染色方法①
- 花びら50g(約7本分)に対して水500ccを容器に入れ、10分ほど煮て1番目の染液をとる
- 1番目の染液を取り出してから、再び500ccの水を加えて、15分ほど煮て2番目の染液をとる
- 1番目と2番目の染液を混ぜ、30cm四方のシルクの布を30分ほど浸し、染色後水洗いする
- バラの茎の灰汁30ccに米酢6cc(2パーセント)を加えた媒染液に、染めて水洗いした布を30分ほど浸す
- 希望の濃度によって、染色し媒染する工程を繰り返す
- (A)酢酸アルミ(0.2パーセント)の媒染液につけると金色がかった茶色になる(B)酢酸銅(0.2パーセント)の液につけると草色になる(C)硫酸第一鉄(0.2パーセント)につけるとグレーになる
バラの染色方法②
- 花びら200g(約30本)を蒸気でやわらかくする
- ミキサーにかけて液状にし、カスも絞って濾す
- バラの茎の灰汁3リットルに米酢180cc(6パーセント)を入れる
- 絞った花びらの汁に、3を加えて、バラ染めの染液をつくる
- 100cm巾×2.7mのシルク生地を、30分ほど浸してから水洗いして乾燥させる
- 5の作業を再度繰り返す
- 硫酸第一鉄(0.2パーセント)の液につける濃いグレーに仕上がる
バラの染色方法③
- 花びら700g(約100本)を用意する
- 200ccの水と240ccの酢を加えて沸騰させ、花びらに沸騰した液を注ぐ
- 花びらを含んだまま、液を瓶に入れて1週間ほど保存すると真っ赤な色が出て染液になる
- 染液に水500ccを注ぎ、花びらを絞る
- 灰汁(わら)1リットルを加え、約2リットルの染液を作る
- 100cm巾×2mのシルク生地30分ほど浸してから水洗いし、乾燥させる
- 染める作業を2回繰り返すと、紫がかった濃いめのピンク色がでる。
酢酸アルミ(0.2パーセント)の媒染液につけると、ピンクがかすかにわかるような黄色となり、酢酸銅(0.2パーセント)の液につけると金色に染まります。
【参考文献】『月刊染織α1985年11月No.56』