投稿者「iroai.jp」のアーカイブ

化学繊維の作り方。代表的な3種類の紡糸方法、湿式紡糸、乾式紡糸、溶融紡糸。

化学繊維を製造するためには、まず最初に原料から鎖状の高分子を溶剤に溶解するか、加熱して水あめのようなドロドロの状態にします。

鎖状の高分子は、原料のセルロースを反応させ改質したり、石油や天然ガスなどの繊維と無縁の原料から合成したりして作ります。

そしてドロドロの高分子を、ノズルといわれる口金(くちがね)の穴から押し出して固めて繊維にする「紡糸」の工程が必要になります。

化学繊維の糸をつくるための紡糸方法は、大きく分けて①湿式紡糸、②乾式紡糸、③溶融紡糸の3種類あります。

他にも、液晶紡糸法、ゲル紡糸法、エマルジョン紡糸法などさまざまな化学繊維の紡糸方法がありますが、今回は上記の基本的な3種類について紹介します。 続きを読む

羊毛(ウール)・獣毛の特徴的な性質である湿潤熱(しつじゅんねつ)の発生

羊毛や獣毛の特徴的な性質として、湿潤熱しつじゅんねつの発生が挙げられます。

湿潤熱とは、羊毛の繊維が水分を吸収する際に(湿潤)によって、放出する熱のことです。

湿潤熱を実感として感じたことがあるという人は、ほとんどいないと思いますが、実話として、水浸しになったウールを保管している倉庫が中にはいれないほど熱気に包まれたり、雨に打たれた毛織り物が凍っても濡れ雑巾のようにはならなかったために、雪山で人が救われたということがあるようです。 続きを読む

羊毛・ウールの繊維直径、繊維長、質番、巻縮数、梳毛糸(そもうし)と紡毛糸(ぼうもうし)の違いについて。羊毛は体の部位によって品質に違いがある

羊毛は、毛を採取するその部位によって品質や性質が変わってきます。

胴体の側面で、肩のあたりがもっとも良質とされるウールがとれるのです。

公益社団法人畜産技術協会の記事「目的にあった羊毛の扱い」に非常にわかりやすい図と説明がありますので、ここに引用します。 続きを読む

発酵とは何か?

発酵とは何か?

一般的には微生物の持っている機能を広く物質生産に応用して、人間の有益なものに利用することを発酵と呼んでいます。

英語で発酵は「fermentation」ですが、ラテン語の「湧く」という意味の「fervere」から生まれた言葉です。 続きを読む

花森安治『灯をともす言葉』。暮らし、生き方、美しさ、創ること、書くことについて

生活雑誌『暮しの手帖』の創刊者である花森安治はなもりやすじ

彼は、「暮しの手帖」の取材、執筆からデザイン、表紙にいたるまで自ら手がけていました。1997年に心筋梗塞でこの世を去るまで、さまざまな才能を発揮しづづけた、稀有な編集者です。

2016年、NHKの朝の連続テレビ小説、『とと姉ちゃん』では、暮しの手帖社の創業者である大橋鎭子おおはししずことの雑誌出版の物語がモチーフにとされました。

灯をともす言葉』という書籍には、より良い生活や暮らしについて考えつづけた彼が、残してきた言葉の数々が載っています。

個人的に好きな言葉がたくさんありましたので、そのなかの一部を紹介したいと思います。 続きを読む

真の美はただ「不完全」を心の中に完成する人によってのみ見いだされる。東洋精神を西欧に伝えた名著『茶の本』

岡倉天心おかくらてんしん(1863年〜1913年)が、日本や東洋の文化を欧米人に伝えるために英語で書いた本が1906年に出版された『The Book of tea(茶の本)』です。

日本人の美意識について書かれた本書の導入部分は、日本や東洋の文化に対する欧米人の認識が間違っていたと岡倉氏は指摘しています。

タイトルは『茶の本』ですが、単に茶に関することだけではなく、茶道、禅、道教などの思想を通して、芸術について論じられています。 続きを読む

デザインとは、何か?デザインの本質は、モノに意味を与えること

デザインとは、何か?

ウィキペディア(Wikipedia)には、デザインとは「審美性を根源にもつ計画的行為の全般を指すものである。」とありますが、上記の質問に対する答えは、100人に聞けば100通りの答えが返ってくると思います。

世界的なベストセラーになった『エクセレント・カンパニー 』や数々の書籍を書いてきた経営コンサルタントのトム・ピーターズが2005年に出版した『トム・ピーターズのマニフェスト(1) デザイン魂。』には、彼が出会ってきた著名な人々の考える「デザインとは」についての記述があります。

デザインを考える上では、先人たちの言葉は非常に参考になり、イメージをふくらませる手助けとなります。 続きを読む

消費者の価値観が多様化することで、ものづくりはどう変わるか。『2030年アパレルの未来―日本企業が半分になる日』

これまでの日本においては、フォロアー層と呼ばれる「自らがこれといった価値観を持たず、世の中のトレンドに流されやすい中間層」が消費市場において大きな割合を占めていました。

ただ、消費社会が成熟化し、インターネットとスマホの普及にともない、人々の消費における価値観の多様化がますます進んでいます。

消費における価値観は、人それぞれ違いますが、大きく見ると8つに分類できるそうです。『2030年アパレルの未来―日本企業が半分になる日』によると、世界中のほとんどの国や地域で、だいたい当てはまる分類であるとされています。

本書を引用しながら、消費における価値観を下記に分類しています。 続きを読む

顧客に愛を届け、愛を受け取る。自動車部品メーカーFIVIがものづくり企業として存在する理由。

ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』のなかで、組織のマネジメントの成功例として、FAVIというフランスの自動車部品メーカーが登場します。

ABOUT FAVI :FAVIホームページ

そのFIVIには、組織が存在する根本的な目的が二つあるそうです。一つ目が、「職の機会が少ない北部フランスの田舎町アランクールに、十分な雇用を生み出すこと」。

二つ目が、「顧客に愛を届け、愛を受け取ること」だそうです。 続きを読む

テクノロジーによって失われる価値とは何か?手間がかかることは、間違いなく「価値」になる。

「手間がかかる」という言葉は、その多くがマイナスのニュアンスを含むものとして使われています。

辞書で基本的な意味を調べてみると、「想定した以上に時間や工数を要したさま」「物事が短い期間では完成しないさま」「何かと世話する必要があり煩雑なさま」などと説明されています。

いずれも効率化と生産性の向上を目指す資本主義的視点からみると、明らかに手間はできるだけなくすべきものでしょう。

一方で、「手間がかかる」は、ポジティブなイメージを含むものとしても使われます。

「手間をかけてつくられた商品」「手間がかかっている料理」などと聞くと、なんだかそのものにたいする期待が高くなるようです。

僕は、このポジティブで使われる手間のイメージが、近い将来、ネガティブなイメージで使われる「手間がかかる」を越えていくと思っています。

「手間がかかる」という言葉は、ほとんどの場面において良い意味を含むものとして使われるようになるのではないかということです。 続きを読む