桜の花は、古くから日本人に愛され、優美な姿を模様化(文様化)したものは桜花文とも言われます。
デザインにおける桜(さくら)の花・桜花文(おうかもん)
7世紀後半から8世紀後半(奈良時代末期)にかけてに成立したとされる日本に現存する最古の和歌集である『万葉集』には、4,500首以上歌が集められています。
その中には桜を詠んだ歌が非常に多く、「桜の花」、「桜花」、「山桜」、「山桜花」など40首が収められています。
平安時代後期から、服飾品において桜の花のデザインが見られます。
鎌倉時代の絵巻物の「春日権現験記」には、可憐な桜花文の衣装を着用している女性が描かれています。
以後、現在に至るまで桜の花はさまざまなデザインで小袖や能装束、歌舞伎衣装などの染織品に用いられてきました。
例えば、17世紀に作られた小袖の「紅綸子地雪持笹桜模様」には、いわゆる寛文小袖(かんぶんこそで)と呼ばれるもので、桜の模様を含めてすべての柄が鹿子絞り(かのこしぼり)で表現されています。
枝垂桜や八重桜など、桜の種類による特徴をデザインに生かしたものも数多くあります。
桜楓文(おうふうもん)
春の桜と秋の楓を組み合わせた模様(文様)を、桜楓文といいます。
京都智積院の障壁画で国宝に指定されている「桜楓図(桜図・楓図)」は、安土桃山時代の傑作とされ、後世に描かれた桜楓の模様は、この絵に倣ったものが多く存在します。
「振袖 藍平絹地松桜楓模様」や「桜楓手綱模様紅型衣裳」などのように、桜と楓を組み合わせた桜楓文は、染織品のデザインにも多く用いられました。
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