染色や染料を煮出して染める草木染めにおいては、染めムラが発生する要素はさまざまです。
いわゆる手染めであれば、どうしてもムラは出てしまうことがありますが、染めムラになる可能性を低くするポイントをいくつか挙げることができます。
染めムラが起こり得る原因を知り、細心の注意を払うことによって、良い染め上がりが期待できるのです。
染色・草木染めでムラなく染める方法。染めムラになる可能性を低くするポイント
目次
染めるもの(被染色物)の精錬(せいれん)
繊維に含まれる油分は、染色加工をする際のトラブル原因となるため、染めるもの(被染色物)を精錬することで、ムラなく染まるリスクを減らせます。
未精錬の標準的な綿繊維には、約5パーセントほどはペクチンやロウ質、色素などの不純物が含まれているため、精錬や漂白によって除去することで、染め上がりの綺麗さや色持ち(染色堅牢度)を向上させることができるのです。
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精錬の作業においては、木灰から作る灰汁や苛性ソーダ、ソーダ灰などのアルカリで処理したり、界面活性剤を溶液に浸したり、蒸すなどして、綿繊維にふくまれている蝋分(油分)や、紡績の過程で付着したワックスや機械油などを取り除く作業が行われます。
染めるもの(被染色物)に水分を浸透させる
乾いた状態のものをそのまま染液にいれた場合、水を弾きやすい素材であるとムラに染まってしまいます。
そのため、染色する前には、必ず染めるもの(被染色物)に水分をまんべんなく浸透させておく必要があります。
水に浸すのでもいいですが、可能であれば熱いお湯を使用した方が浸透しやすいです。
水を弾きやすい素材であれば、事前に精錬したり、界面活性剤を入れた液の中でしっかりと浸透させてから、染色を行うことがムラなく染めるためには大事な作業です。
染色温度(dyeing temperature)
染料の染まり具合に大きな影響を及ぼすのが、染色の際の温度です。
温度が高いほどそれだけ大きなエネルギーを持っているため、すべての分子の動きが活発になります。
染色の際も、温度が高いほど染まり具合が早くなります。
したがって、染料の種類や染色の目的によって最適温度を決める必要があるのです。
いきなり高い温度で染め始めると、急速に染まっていくため、だんだんと染液の温度を上げていくということもムラ染めにしないためには大事なポイントです。
初期吸着(しょききゅうちゃく)・ストライク(strike)
染液(染浴)の中に繊維を入れるとすぐに染色が始まりますが、初めの数分で極端な場合には、染料の大部分が繊維に移行して(染まって)いきます。
このような初期の吸着を、ストライク(strike)といいます。
初期吸着(ストライク)の程度が激しいとムラになりやすいため、均染剤(緩染剤)を加えたりする場合があります。
初めの数分でよく染まっていくことを考慮に入れながら、布や糸を染液(染浴)の中に入れたら、少なくとも10分間くらいは良くかき混ぜることがムラ染めを防ぐためには重要なポイントです。
浴比(よくひ)のバランス
浴比(bath ratio)とは、染めるべき布や糸の量と、染液(染浴)の量の比を表します。
浴比が小さいほど染料の濃度が高くなり染まりやすいですが、浴比が小さければ小さいほどムラにもなりやすいので注意が必要です。
一般的な浴比の割合としては、染めるべき布や糸の量を1とすると、染液(染浴)の量との比が「1:20」〜「1:30」ぐらいが用いられています。
草木染めで染めた後の乾かし方
草木染めで染色した後、染めたものを水洗いしてから乾燥させます。
染色後、一番最初に乾燥させる際には、基本的に天日で乾かすのを避けた方がリスクが少ないです。
染色後、濡れている状態から乾く際(布や糸の繊維から水分が蒸発する際)に、天日の元だと色が変わることがあるのです。
例えば、茜は、染色後に乾かす際に天日干しすると変色するリスク(乾く際に日光に反応した部分が濃く染まったり)があります。
せっかく綺麗に染めても、乾燥の際にムラになってしまったら非常にもったいないです。
この色の変化に関しては、染める染料や媒染によっても変わってきたり、天日の元で乾燥させた方が良い場合もあるため、経験がものを言います。
ただ、基本的には草木染めで染色した後、最初に乾かす際は、「天日干し」ではなく「陰干し」することが、ムラが発生するリスクを下げるポイントの一つです。
特に、製品染めをする場合は気を付ける必要があるでしょう。