小紋(こもん)は、型染めの技法を用い、小形の紋様の集合を一定の間隔で繰り返して表現された染め物を表します。
模様(文様)の大きな大紋(だいもん)や中形(ちゅうがた)に対して、小さい模様という意味で「小紋(こもん)」と名付けられました。
小紋が武家以外の人々に着用され始めたのは、江戸時代に新興商人が経済力を持つようになってからで、これまでに見られないような新しい柄が生まれ、羽織や着物に染め出されました。
小紋染の染色技法の中で特徴的なものの一つに、「高砂染」があります。
高砂染(たかさごぞめ)

錐彫りで松葉文が彫られた伊勢型紙
高砂染は、一度型付けをしてから薄く染色し、水洗して糊を落とさずにその上から別柄の型を用いて染色するというニ度型付けする技法です。
そのため、色は、濃淡に染めた二色と最初に糊を置いて防染された白の部分の三色になります。
江戸時代末期、播州(現在の兵庫県)の姫路で縮緬や絹紬(きぬつむぎ)、木綿などの生地に、高砂の「相生の松」のような松に関連する文様(模様)や尾上神社の銅鐘などを小紋で染めた高砂染が流行したようです。
高砂神社には、雌株と雄株の2本の松が寄り添うように生える「相生の松」が奉られています。
相生の松は、1つの根から2本の松が立っているように見えることから、夫婦が深く結ばれ、ともに長く生きることの象徴として知られ、能や謡曲の題材としても親しまれてきました。
高砂文(たかさごもん)
能の詞章である謡曲にちなんだ高砂文は、高砂染にも用いられています。
高砂文は老松や尉(老夫)と姥(老女)だけで表現されたり、背景となる帆掛船(帆を張り、当たる風を利用して走る船)や尉(老夫)の持ち物である熊手などで表現されることもありました。