8世紀「浅緑地花卉鳥獣文錦」正倉院蔵

正倉院裂(しょうそういんぎれ)とは?正倉院宝物として保存されている裂(布きれ)について

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正倉院裂しょうそういんぎれとは、正倉院宝物しょうそういんほうもつとして保存されているきれ(布きれ)のことです。

正倉院裂しょうそういんぎれには、奈良時代の天平勝宝てんぴょうしょうほう年間(749年〜757年)に行われた東大寺大仏開眼供養だいぶつかいげんくように用いられた裂や聖武天皇(701年〜756年)にゆかりのあった裂などがあります。

その大部分は絹と麻でできた織物で、他には羊毛(ウール)を熱や圧力をかけて縮めた毛氈もうせんがあります。

正倉院裂(しょうそういんぎれ)とは?

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東大寺正倉院/あずきごはん/CC BY-SA 4.0/via Wikimedia Commons,Link

正倉院裂しょうそういんぎれは、中国から舶載されたものと日本において生産されたものとあります。

宝物の中でも特に絹のにしき類は特に優れており、経糸によって地と文様を織り成す経錦たてにしき(けいきん)、緯糸によって地と文様をつくる緯錦よこにしき(ぬきにしき)があります。

経錦たてにしき(けいきん)は、古い技法で飛鳥時代前後の伝世品とされ、数十点存在します。

その代表的なものに、「獅噛文長斑錦しかみもんちょうはんきん」があり、中国で漢代に愛好された獅噛文しかみもん(獅子が口を開いたように見える文様)が三種の色糸で織り出されています。

正倉院裂の模様(文様)は多種多様で、植物系には唐花文、八稜唐花文、菱形唐花文などがあります。

琵琶袋残欠」は、9色の色糸を用いて唐花文が織り出された代表的な遺品です。

鳥獣模様には、鳳凰ほうおう、花喰鳥、人物、山羊、孔雀くじゃくなどがあり、他に幾何学的な図形があります。

紫地鳳形錦御軾むらさきじおおとりがたにしきのおんしょく」には、鳳凰ほうおうを囲んだ葡萄唐草文が織り表されています。

正倉院裂の文様は、中国唐文化やペルシャのササン朝の影響がみられ、これら融合して文様化されたかたい雰囲気の構図などが主ですが、中には平安時代以降の和風なデザインつながる、絵画風で優しい雰囲気の構図なども見られます。

Webサイトの文化遺産オンラインで、「正倉院裂しょうそういんぎれ」を検索すると、数々の正倉院裂をみることができます。

参照:文化遺産オンライン

9,000点にも及ぶ正倉院宝物(しょうそういんほうもつ)

正倉院宝庫しょうそういんほうこに保存されている正倉院宝物しょうそういんほうもつには、正倉院裂しょうそういんぎれを含むさまざまな装飾品のほか、仏具や文房具、服飾品など約9,000点にも及びます。

服飾品に関しては、数百点にものぼる品が保存され、奈良時代の服飾文化のほか、中国をはじめとして西アジアの服飾文化をも知ることができる貴重な資料となっています。

正倉院宝庫しょうそういんほうこは、1000年以上の間、朝廷の監督の下に東大寺によって管理されてきました。

明治8年(1875年)に、宝物ほうもつの重要性を考慮して、内務省ないむしょう管轄かんかつすることになり、その後は農商務省のうしょうむしょうを経て宮内省くないしょうに移り、そのまま現在に至ります。

宝庫ほうこは、正倉のほかに西宝庫・東宝庫があり、宝物ほうもつはこの両宝庫に分けて保存されています。

正倉院宝物にはさまざまな技術や技法を用いて、装飾が施されていたことがわかっており、使用された顔料と染料についての調査も行われています。

関連記事:正倉院宝物(しょうそういんほうもつ)に使用された顔料と染料について

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