紗綾形は、卍形を繋いて構成された文様(模様)です。
光沢のある絹織物である紗綾の地紋(布地に織り込まれた織模様)に、卍を斜めにかさねた「万字繋ぎ」(紗綾形)が頻繁に織り出されたことから、「紗綾形」という模様の名称になったとされます。
デザインにおける紗綾形(さやがた)

紗綾形(さやがた)の柄に錐彫りで彫られた伊勢型紙
中国では、古くから複数の卍字を組み合わせた模様が用いられており、日本にもそのモチーフが伝わりました。
「紗綾」とは、絹織物の一種で、ポルトガル語の「saia」が語源とされます。
四枚綜絖の斜文織で菱形や稲妻型の文様を織り出した「飛紗綾」や卍型を表現したもの、文様のないもの(滑紗綾)などのデザインがあります。
糸使いは綸子とほとんど同じですが、地質は紗綾の方が比較的薄く、日本では天正年間(1573年〜1593年)頃に、京都西陣で織り始められたと考えられます。
江戸時代後期に出版された三都(京都・大阪・江戸)の風俗や事物を説明した一種の百科事典である『守貞謾稿』(天保8年 (1837年)に記録を始め、嘉永6年(1853年)成立)には、「紗綾形」についての記載があります。
紗綾形は、模様が規則的に途切れることなく繰り返されることから「不断長久」(絶えず長く続く)意味を持ち、繫栄や長寿など意味が込められる吉祥文様として知られていました。
伊勢型紙の彫刻デザインにおいても、紗綾形は多く用いられてきたモチーフの一つです。

紗綾形(さやがた)の柄に彫られた伊勢型紙

紗綾形(さやがた)の柄に彫られた伊勢型紙

紗綾形(さやがた)の柄に彫られた伊勢型紙

紗綾形(さやがた)に井桁絣に絞り柄が彫られた伊勢型紙

紗綾形(さやがた)に車文(くるまもん)が彫られた伊勢型紙
紗綾形に似た工字繋ぎ(こうじつなぎ)

工字繋ぎ(こうじつなぎ)文様
紗綾形のデザインに似た模様に工字繋ぎ(こうじつなぎ)があります。
紗綾形は卍が連なった模様ですが、工字繋ぎは漢字の「工」の字を規則的に連なって出来た模様です。
紗綾形と同じく、着物の地紋(布地に織り込まれた織模様)として多く用いられてきました。