龍(応竜)は、中国では古くから麟(麒麟)、鳳(鳳凰)、亀(霊亀)とともに四霊の一つに数えられます。
デザインにおける龍(りゅう)
空想上の動物として龍は水中に棲み、雲にのって飛翔し、雨を降らすとされ、その形は時代の思想によってさまざま変化していきました。
頭は、駝(ラクダ)、胴は蛇(ヘビ)、腹は蛟(ミズチ)、角は鹿(シカ)、目は鬼(オニ)、鱗は鯉(コイ)、耳は牛(ウシ)、爪は鷹(タカ)、掌は虎(トラ)に似るといわれます。
また、翼を持ったり、火を吹いたり、宝珠を持ったりと、それぞれの形によって名前が付けられました。
例えば、以下のように名前がつけられていました。
- 蛟龍(鱗のある龍)
- 応龍(翼のある龍)
- 虯龍(角のある龍)
- 螭龍(角のない龍)
- 蟠龍(とぐろを巻いてまだ天に登らない龍)
服飾の模様(文様)としての龍
服飾の模様(文様)としての龍(龍文)は、中国では黄帝の時代から「袞冕十二章」の一つとして天子の袍の模様(文様)に用いられ、これは日本にも伝えられました。
「袞冕十二章」の「袞」というのは帝王の特別の礼服、「冕」というのは帝王の特別な冠、十二章というのは、帝王の権威を表す十二の図案を表すようです。
日本における龍文は、唐代の龍の形に最も似ているとされます。
奈良の正倉院に保存されている正倉院裂のなかには、双龍円文の綾が数種類あり、忍冬唐草や連珠とともに優れたデザインで構成されています。
室町時代から、江戸時代にかけての名物裂にも、優れた龍文が多く、「角龍金襴」や「雨龍間道」、一重蔓唐草に雨龍・火焔の模様(文様)が織り出される「紹鷗緞子」などがあります。
能装束には、厚板や舞衣、側次や狩衣などに龍が表現され、歌舞伎衣装や祭礼衣装などにも奇抜で豪華なデザインが表現されていました。