染色・草木染めにおけるリンボク(橉木)


リンボク(学名:Prunus spinulosa)は、バラ科バクチノキ属の常緑高木で、湿気の多い山地の谷間や温暖な沿海地にある林内などに生え、樹高は5m~15mほどに成長します。

漢字では橉木りんぼくと書き、若木の葉は針状の鋭い鋸歯きょし(葉の周縁にあるギザギザ)をがあることから、「ヒイラギカシ」の別名もあります。

リンボク(橉木),Prunus spinulosa rinboku04

リンボク(橉木),Prunus spinulosa,Keisotyo, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons,Link

リンボクが庭木として使われることは少ないですが、9月〜10月頃の秋に咲く花には春の花のような香りがあり、白色の小さな花をいっぱいに咲かせるため、「観賞価値」は高いとされます。

染色・草木染めにおけるリンボク(橉木)

リンボクは、「ヒイラギカシ」という別名の他に、樹皮がサクラに似ており材が硬いため、「カタザクラ」とも言われます。

花の後には長さ7mm~10mmほどの楕円形の果実ができ、開花翌年の4月~6月に熟します。

リンボクの樹皮は黒褐色で光沢を帯びており、皮目と呼ばれるシワが入っています。

樹齢を重ねると、紫あるいは紅色(赤味)を帯びた淡い褐色となり、皮目が目立たなくなります。

木材は、拍子木ひょうしぎ(拍子を取るための木の音具)や弓などの器具や薪炭しんたん(薪や炭など、燃料用に使用する木材)などに利用されました。

染色・草木染めにおいては、リンボクの樹皮の煎汁せんじゅうを用いて、和紙を淡紅色に染めていました。

関連記事:和紙を染める方法と色紙の歴史。漉染め、浸け染め、引き染め、吹き染めについて

かつては、静岡県伊豆地方で作られた修善寺紙しゅぜんじがみとして知られている雁皮紙がんぴし(ジンチョウゲ科の植物である雁皮から作られる和紙)や、薬袋紙の染色に用いられることもありました。

上質な和紙であった修善寺紙しゅぜんじがみは、三椏みつまたこうぞ雁皮がんぴと、「ねり」の材料である「トロロアオイ(黄蜀葵)」を原料としていました。

トロロアオイの根から採れる粘液を使用することで、和紙をく際、原料となる繊維の広がりを均一にする効果があります。

修善寺紙は、薄紅色で横に筋があるのが特徴的で、非常に薄い上質の紙として古くから全国に名が知られていました。

リンボクの樹皮の煎汁せんじゅうで染めてから、灰汁媒染あくばいせんすることで、淡紅色や茶色系を染められます。

関連記事:染色・草木染めにおける灰汁(あく)の効用と作り方。木灰から生まれる灰汁の成分は何か?

リンボクの葉と根には青酸せいさんが含まれており、薬用となります。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です