鴛鴦模様(おしどりもよう),鴛鴦文(おしどりもん),伊勢型紙

デザインにおける鴛鴦模様(おしどりもよう)・鴛鴦文(おしどりもん)

鴛鴦おしどり(オシドリ)は、オスの姿が特に美しく、多彩な羽根色や脇腹の銀杏羽(いちょうばね)、後頭部の冠羽(かんう)が特徴的です。

中国古代に、「君子万年くんしばんねん(教養や徳の高い立派な人はいつまでも長生きであるということを表わした四字熟語)」を祝うめでたい鳥としてや、夫婦和合ふうふわごう(夫婦円満)の象徴とされました。

日本でもこの思想を受け、二羽の鳥が翼を並べること(男女の仲睦まじい様子)のめでたさや翼の美しさをモチーフに、「鴛鴦文(おしどりもん)」として模様化(文様化)しました。

鴛鴦(オシドリ)Pair of mandarin ducks

鴛鴦(オシドリ)Pair of mandarin ducks,© Francis C. Franklin / CC-BY-SA-3.0, CC BY-SA 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0>, via Wikimedia Commons,Link

続きを読む

デザインにおける額文(がくもん)

額文がくもんとは、神社仏閣などに掲げる額を模様化(文様化)したものです。

紋章には、神聖視する意味で額文がくもんが用いられました。

江戸時代中期ごろには、額文がくもん小袖こそでおびに用いることが流行します。

江戸時代中期に作られたとされる「唐織からおり 紅地七宝繋額模様べにじしっぽうつなぎがくもよう」は、地紋じもんの七宝繋ぎ模様をすべて平金糸ひらきんしで織り出し、額文がくもんの中にはさまざまな細かいデザインが巧みに採り入れています。

唐草模様(からくさもよう)伊勢型紙

デザインにおける花卉文(かきもん)

花卉文かきもんとは、草花や樹木を模様化(文様化)したものを表します。

ヨーロッパでは草花や樹木を写生的(自然や事物を実際に見たままに描くこと)に扱うことが少なく、ロゼット(rossette)やパルメット(palmette)、唐草模様などにデザインされましたが、東アジアや日本などでは写実的に扱われることが多くありました。

古くは、中国やインド、ペルシャなどからの影響が大きく、唐花からはな宝相華ほうそうげなどの空想的な花卉文かきもんが愛好されていました。

近世以降は、特に、藤や燕子花かきつばた、紅葉などを写生的に扱い、花卉かきの趣や季節感が表現されてきました。

デザインにおける垣根文(かきねもん)

垣根文かきねもんは、家屋の外周に設けた垣根を模様化(文様化)したものです。

材料や作り方、形や好み、場所などによってさまざまな種類の垣根文かきねもんがあります。

花卉文かきもんや風景文と共に用い、情趣が添えられます。

花卉文かきもんとは、地面から生えた草花を模様化(文様化)にしたもので、牡丹ぼたん石榴ざくろ、菊、椿つばき薔薇ばらなどの植物がよく用いられます。

デザインにおける燕子花(かきつばた)

燕子花かきつばたは、アヤメ科の植物で池や沼、湿地に自生しています。

日本においても親しまれており、7世紀後半から8世紀後半にかけて編集された、現存する日本最古の歌集である『万葉集まんようしゅう』には、燕子花かきつばたが詠われています。

平安時代の歌人である在原業平ありわらのなりひら思わせる男を主人公とした和歌にまつわる短編歌物語集である『伊勢物語』には、五七五七七の最初の文字を並べると「かきつはた」になる下記の一首を詠んでいます。

衣 つつなれにし ましあれば るばるきぬる びをしぞ思ふ

現代語訳 (何度も着て身になじんだ)唐衣のように、(長年なれ親しんだ)妻が(都に)いるので、(その妻を残したまま)はるばる来てしまった旅(のわびしさ)を、しみじみと思うことです

古くから燕子花かきつばたが日本人の美意識や情感に非常にうまくマッチしていたと言え、さまざまなデザインの題材にも用いられてきました。
続きを読む

張木(はりき)小巾

ものづくりにおいて、仕事道具を大事に扱うことの大切さ

ものづくりにおいて、仕事で使用する道具を大切にできるかどうかは作り手としては非常に大切なことです。

なぜなら、道具を大切にするという取り組みの姿勢が、結果的に成果物の出来上がりの質に影響すると考えられることが多いためです。

木版画家として知られていた立原位貫たちはらいぬき氏(1951年〜2015年)は、著書の『一刀一絵』にて、仕事道具について、以下のように語っています。

いい道具は時を繋いで、いい仕事をしてくれる。使い続けることでその命が生かされていく。『一刀一絵

立原位貫たちはらいぬきは、江戸時代と同じ手法、絵具、紙を独学で研究し再現し、それらの道具をつかって江戸時代の浮世絵の復刻を成し遂げた木版画家であり、著書である『一刀一絵』からは、道具に徹底的にこだわる姿勢が伝わってきます。

デザインにおける鍵文(かぎもん)・鍵形文(がぎがたもん)

鍵文がぎもん鍵形文がぎがたもん)は、土蔵の戸などに使われる落し錠を外すための鍵を模様化(文様化)したものです。

鍵部分は鉄棒が雷文の形のように曲がり、手(鉄棒)には木の取っ手がつきます。

鍵文がぎもんは、土蔵の中の宝物を守るということから縁起がよい福徳の象徴として文様化され、宝尽たからづくしの中に含まれています。

「鍵紋」として家紋にも取り入れられており、染織品の模様(文様)としては、浴衣かすりのデザインにも使用されていました。