次々と変化していく波の状態を表した模様(文様)は、大きく「波文」という括りで表現できます。
デザインにおける波文(なみもん)

波文(なみもん),伊勢型紙
日本において、波文は、古くからさまざまな形で表現されてきました。
小波、波濤文、片男波など波の大きさ特徴をつかみながら巧みに文様化されてきました。
青海波や光琳波などは、最も様式化されたデザインと言えます。
染織品における波文は、地紋として表現されたり、風景表現に組み込まれたり、波そのものが主題として取り入れられたりしてきました。
青海波文(せいがいはもん)

青海波文様,伊勢型紙
青海波文は、同心円を交互に重ね、同心円の一部が扇形状に重なり合う幾何学的な文様(模様)です。
群馬県伊勢崎市豊城町横塚で出土した埴輪「埴輪 盛装女子」は、半円形を重ねた青海波文様のような上着をつけている女性の埴輪です。
鎌倉時代に作られたとされる「古瀬戸黄釉魚波文瓶」や、16世紀後半の安土桃山時代ごろに作られたとされる「海浜松桜蒔絵硯箱」にも、青海波文のバランスを片方に寄せた形を主体が表現されています。
染織品においては、能装束や小袖などの水を表す地紋としても多く用いられてきました。
小波文(さざなみもん)
小波文は、波文の中ではやさしく、おとなしい感じで表現されます。
「へ」の字形の下に、二、三本「への字」を重ね、この形をいくつも作って集めて描かれます。
江戸時代(18世紀後半)に作られたとされる「納戸紋縮緬地淀の曳舟模様小袖」には、小波文で流れを表現された淀川を運行する船に乗る舟子や船頭、乗客たちが表現されています。