井桁の読み方は「いげた」であり、井桁模様は古くから織りや家紋などのデザインに使用されてきました。
井桁(いげた)とは
井桁とは、井戸の上部の縁を、地上で井の字形に組んだ木の囲いのことです。
井戸は、掘ってからすぐ使用できるわけではなく、地面と同じ高さの井戸だった場合は、周囲の土やゴミが井戸の中に入ってしまわないように、井戸を掘ったら井桁を組んで、地面より高い位置に井戸の入口を作る必要がありました。
井桁があることで井戸に蓋ができるようになるため、人が井戸と気がつかずに落ちてしまうような事故を防ぐ目的もありました。
井桁は、古くから生活に欠かせない水源である井戸を守るその重要な役割から、家内安全の意味が込められる模様としても活用されるようになります。
井桁模様(いげたもよう)とは?
古代より命をつなぐ水の湧く場所は、精霊の宿る場であり、神を祀る場でもありました。
井桁模様とは、井戸を象徴する井桁の「井」の形を象形化した模様で、人々から親しまれるようになります。
井桁模様は4本の直線によって囲まれた正方形の幾何学的文様で、似ている模様に菱形の連続文様である井筒があります。
井桁模様は、武将の間で家紋(井桁紋)として多く使用されるようになります。
井桁紋は、姓に「井」の字が付く家で多く用いられ、彦根藩藩主であった井伊直政(1561年〜1602年)の家紋として有名です。
井伊家は、家で定められた定紋である橘紋とは別の紋 である替紋として、井桁紋を用いていました。
井桁絣(いげたがすり)とは?
井桁模様は、染めや織りに用いられ、江戸時代後期から明治、大正、昭和の時代にかけて、庶民の間でとりわけ親しまれた織物に絣がありますが、絣織物の基本柄の一つとして井桁模様がありました。
井桁模様に織り出された絣は、井桁絣として人々に知られていました。
例えば、下記の画像の井桁絣は、上下左右に井桁模様が藍と白交互の連続文様として織り出され、なおかつおもて面から型染で模様(井桁柄の隅にある濃い色の四角の部分)が染め重ねられています。
木綿の絣は、主に藍染によって染められた紺色の地でしたが、藍染で染められることによって、生地が丈夫になり、また汚れが目立たなくなる利点もあり、庶民の間で素朴で温かみのある絣文様が好んで用いられたのです。
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絣(織り)と型染(染め)のふたつの技法が併用されたものは特殊な例で、布の裏面をみると経緯絣のみでも井桁模様が判別できるにもかかわらず、あえておもて面から模様の形状や輪郭をよりはっきりさせるために型染が施されたものとなります。
経緯絣と染めが併用された染織としては、17〜18世紀にインドから舶載されたインド更紗の格天井などの存在が知られていますが、上記の布は、それに着想を得て製作された可能性があります。