蓮(はす)で染め色の例

染色・草木染めにおける蓮(はす)


はす(学名Nelumbo nucifera)は、ハス科ハス属の耐寒性たいかんせい落葉多年草らくようたねんそうの水生植物です。

インドやその周辺地域が原産地とされ、世界中の熱帯や温帯地域の蓮田はすだ、泥沼、池、水田で栽培されています。

蓮(はす),Nelumbo nucifera

蓮(はす),Nelumbo nucifera,Shin-改, Public domain, via Wikimedia Commons,Link

英名ではロータス(Lotus)と呼ばれ、大きな葉を乾燥させたものは漢方薬の「荷葉かよう」の原料となります。

地下茎ちかけいは、泥の中をうように延び、秋の終わりに地下茎ちかけいの先が太ってレンコン(蓮根れんこん)ができます。

花は、7月〜8月に咲き、多数の花弁が重なり合い、桃色や白色の花をつけます。

花が散ったあと、花床かしょうは大きくなり、蜂の巣のような穴の中に果実をつけます。

仏教と深い関わりのあった蓮(はす)

蓮(はす)で染め色の例

蓮(はす)で染め色の例

はす」や「睡蓮すいれんは、古来より仏の悟りをあらわすとして尊ばれ、お寺に安置されている主要な仏様は、蓮華の形を模した蓮華座れんげざ鎮座ちんざしています。

蓮華れんげという言葉は、はす睡蓮すいれんを表し、仏教の伝来ととも中国から伝えられたものです。

南無妙法蓮華経なむみょうほうれんげきょう」という世の中の真理を蓮の花に例えて説いた仏教の教えは、蓮の花のように清浄と不浄が混沌と存在する世の中から悟りを見出すことを教えとしています。

そのため仏教において蓮の花は非常に重要視され、シンボルのようにもなっているため、荷花文かかもんは仏教に関連したものに多く用いられてきた模様(文様)です。

染色・草木染めにおける蓮(はす)

奈良時代(710年〜784年)には、装潢師そうこうしという人々が、書物を書き写すために使う和紙の染色や紙継ぎなどを職業としていましたが、染紙を染めた材料については「正倉院文書しょうそういんもんじょ」に記されており、蓮葉はすはの名前が付く色紙も含まれています。

関連記事:和紙を染める方法と色紙の歴史。漉染め、浸け染め、引き染め、吹き染めについて

蓮葉はすは染紙」として「正倉院文書しょうそういんもんじょ」に記されており、紙を染めていたとすれば、布や糸なども染めていた可能性が大きくあります。

万葉集まんようしゅう』にのっている歌の多くは、今から1350年前から1250年ぐらいの飛鳥時代から奈良時代の間に作られています。

この100年くらいの間を、「万葉の時代」と言うことがあります。

万葉の時代に行われていたはすの染め方として、木灰の灰汁媒染ばいせんした染色であったと考えられます。

蓮葉はすはは、葉より実をとったあとの花床かしょうの方がよく染まるため、花床かしょうも利用されていた可能性もあります。

実がとれて乾燥した蓮(はす)の花床,Nelumbo nucifera fruit Linz

実がとれて乾燥した蓮(はす)の花床,Nelumbo nucifera fruit Linz,Walter Isack (isiwal), CC BY-SA 3.0 AT <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/at/deed.en>, via Wikimedia Commons,LInk

染色すると、いくらか赤味のある薄茶色に染められます。


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