古代ギリシャにおける染織と服飾


古代ギリシャは、他国との交易が盛んに行われ、染織品においても麻織物を生産したエジプトや西アジアの毛織物などの影響を受けていたと考えられます。

古代ギリシャ時代の染織については、その遺品を見ることができないため、壁画や彫刻などに表現されている服装や古文書における記述、周辺地域の状況などから推測するしかありません。

古代ギリシャにおける染織

ギリシャの衣服は、ゆったりとしているのが特徴的で、もっとも一般的に用いられていたのが毛織物とされ、亜麻あま織物も作られていました。

織りの組織は、密度が高いものから低いものまで織り分けられていたと考えられます。

ギリシャの紡績技術を具体的に示す資料は非常に少ないながらも残っており、いくつかの壺絵には糸をつむいだり、機織りの場面が描かれています。

紀元前8世紀後半頃、ホメロスによって完成されたとするギリシア最古の叙事詩である『オデュッセイア』には、織物に関する記述があります。

1871年、クリミア半島で発見されたギリシャの綴織つづれおりは、現存する毛織物でもっとも古いものとされ、紀元前4世紀頃に作られたとされます。

ギリシャの綴織つづれおりは、エジプトの伝統を受け継ぎ、経糸に亜麻あま糸、緯糸に染織した毛糸を用いて模様(文様)を織り出されていました。

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布地の模様(文様)としては、幾何学文きかがくもんとしては、四角や菱形ひしがた、星、雷、水玉などが表現されています。

植物文では、アカンサスやロゼット、月桂樹げっけいじゅ、水草、蔦(ツタ)などの葉形などがあり、リズミカルに茎を表現したアラベスク(唐草模様)が特徴的です。

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色彩は、黄色、藍色、緑色、すみれ色、暗赤色あんせきしょく暗紫色あんししょく、黒などが植物染料や鉱物を用いた顔料を用いて染められていました。

古代ギリシャにおける服飾

古代ギリシャの服飾は、エジプトに似て、麻や毛織の布を体に巻くことに始まります。

特徴的なのは、「キトン」と呼ばれる古代ギリシアの男女が用いた衣服です。

キトンには、ドーリア式(ペプロス)とイオニア式があります。

短いキトンは、「コロビウム」といい、青年や労働者が用いていました。

キトンの上に着る外衣は、「ヒマチオン」といい、大型で長方形の布を男女共に用いました。

ヒマチオンにひだをつけた装飾的なショールは「ディプラックス」といい、乗馬用に右肩をブローチで留める衣服を「クラミュス」といいます。

一般的には、男女ともにチュニックを用い、その上からヒマチオンやクラミュスなどを重ね着していました。

衣服の色合いは白が多く、青や緑、赤や茶などの無地染めもありました。

衣服のデザインにおける模様(文様)の使用は少なく、市民や司祭、軍人などの階層によっては区別がありました。

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