羊毛(ウール)を染色した際に素材がフェルト化して硬くなってしまうと、風合いが大きく変わってしまったり、糸を染めた場合は糸同士がくっついたりして、使い物にならなくなってしまいます。
羊毛(ウール)のフェルト化は、水分、高温と圧力、薬品などが作用することで起こる可能性があるため、それらの要素に注意して染色を行う必要があります。
目次
ウール(羊毛)のフェルト化とは?
フェルト(Felt)という言葉は、ギリシャ語のFulzen(結合させる)からきているように、ウール(羊毛)の縮絨性(縮むこと)を言い表しています。
セーターを洗濯機でガラガラ洗って強い力を加えてしまったり、洗うお湯が熱すぎたり、アルカリが強い洗剤を使ったりなどして、ウールがフェルト化してしまう現象を経験をしたことがある方もいるかもしれません。
フェルトのでき方(製法)は、羊毛や獣毛繊維をアルカリや熱、圧力などの作用で、あえて縮絨(felting)させるというものです。
縮絨する理由は、羊毛などの繊維の表面にある鱗片(スケール)や天然の撚り(クリンプ)が影響しているためです。
染色・草木染めにおいて、ウール(羊毛)のフェルト化を防ぐ方法
フェルトの材料になるウールは、一般的には油分をとっていない未脱脂の原毛が使用されます。
そのため、ウールの糸や製品そのものを染色する場合は、事前に精錬を行ったり、防縮加工を施されたウォッシャブルウール(washable wool)や染色に適した処理が行われているウール素材を購入するなど、事前の処理やそもそもの素材選びがフェルト化を防ぐ上で一番重要なポイントです。
きちんと素材を選んだ上で、染色の過程におけるフェルト化を防ぐポイントとしては、以下のようなものが挙げられます。
染液の量を多めにする
染液の量が少ないとフェルト化するリスクが高くなるため、染めるものに対して、染液を30倍くらいにしておきます。
例えば、羊毛(ウール)500gを染める場合、染液は30倍で15リットルになります。
染める量に対して10倍くらいでぐつぐつ煮てしまうと、フェルト化するリスク高くなってしまうのです。
染色中にかき混ぜすぎない
羊毛(ウール)を染める際にムラに染まるのを心配するあまり、染色中にかき混ぜすぎてしまうとフェルト化するリスクが高くなります。
放冷(ほうれい)から脱水時に注意する
染色において最もフェルト化するタイミングが、温度の高い状態から冷却して(放冷)、脱水するタイミングです。
羊毛は100°Cから70°Cまで急激に温度が下がると良くないと言われており、温度変化には特に注意する必要があります。
染色が終了してもすぐに羊毛(ウール)を取り出さず、温度が40°Cくらい、もしくは完全に冷え切ってから取り扱うとフェルト化するリスクが低くなります。
脱水は、よく羊毛が冷えてから行うことが大切です。