羊毛(ウール)の歴史。スペイン・メリノ種から、各国で優秀な品種が作られる


一万年前の新石器時代、中央アジアでは、羊が家畜として飼育されていたと言われます。

羊毛(ウール)の歴史

Wilderness Road - Sheep for wool (7047953945)

Sheep for wool,Virginia State Parks staff, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons,Link

現在のイラクの一部にあたるメソポタミア地域で栄えたバビロン王朝時代には、(紀元前1830年〜1530年)すでに毛で織られた織物があったとされます。

紀元前200年ごろになると、ローマ人が羊毛を改良し始め、1世紀には、現代にも名前が知られているスペイン・メリノ種が生まれました。

中国では、孔子が生きていた時代(紀元前551頃〜紀元前479年)の書物に、羊についての記述があります。

毛織物技術に関しても、インドやエジプトと同様に発達していたと考えられています。

スペイン・メリノ種から、各国で優秀な品種が作られる

スペインでは、品質にすぐれたメリノ種の羊を独占するために、長年に渡って国外持ち出し禁止としていました。

その当時から密輸は行われていたと考えられますが、スペイン王室の財政が厳しくなるにつれ、公式にも限定輸出がなされます。

ヨーロッパ各国ではスペインのメリノ種を輸入して、自国の羊に改良を加えて数々の優秀な品種を作りました。

18世紀後半にはメリノ種がドイツに渡り、サキソニー・メリノ種が誕生しています。

またメリノ種の移植に大きく成功したのが、オーストラリアです。

オーストラリア産のメリノ種として、ニュージーランド、南アフリカ、南アメリカ等大きく広がっていきました。

北アメリカに入ったのは、少々遅れて18世紀末と言われています。

日本における羊毛・毛織物の歴史

日本では、古くから毛織物は輸入されてきました。

織田信長と豊臣秀吉が中央政権をにぎっていた安土桃山時代(1568年〜1600年)には、毛織物として、外国からきた毛氈もうせん(カーペットのようなもの)や羅紗らしゃ(表面を毛羽立ててフェルトのようにした厚手の毛織物)が珍重されました。

ただ、自国における羊毛の生産に関しては、明治時代になるまで、幾度となく羊を輸入してきたものの移植には失敗してきました。

1876年(明治9年)には、ドイツから技術を導き入れた日本における最初の毛織物工場が、東京千住に作られて、後々輸入された洋毛をつかった高級な梳毛そもう織物が生産されました。

梳毛糸そもうしというのは、長い毛足を引き揃えて、短い羊毛は取り除いてつくった糸のことで、紡毛糸ぼうもうしと比べると滑らかで光沢感があるのが特徴的です。

【参考文献】『21世紀へ、繊維がおもしろい』


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