羊毛(ウール)の歴史。新石器時代から中央アジアで家畜として飼育される


一万年前の新石器時代、中央アジアでは、羊が家畜として飼育されていたと言われます。

羊毛(ウール)の歴史

現在のイラクの一部にあたるメソポタミア地域で栄えたバビロン王朝時代には、(紀元前1830年〜1530年)すでに毛で織られた織物があったそうです。

紀元前200年ごろになると、ローマ人が羊毛を改良し始め、1世紀には、現代にも名前が知られているスペイン・メリノ種が生まれました。スペインでは、品質にすぐれたこの種類の羊を独占するために、長年に渡って国外持ち出し禁止としていました。

その当時から密輸はもちろんの行われていたでしょうが、スペイン王室の財政が厳しくなるにつれ、公式にも限定輸出がなされ、18世紀後半にはメリノ種はドイツに渡り、サキソニー・メリノ種が誕生しています。

またメリノ種の移植に大きく成功したのが、オーストラリアです。オーストラリア産のメリノ種として、ニュージーランド、南アフリカ、南アメリカ等大きく広がっていきました。

北アメリカに入ったのは、少々遅れて18世紀末と言われています。

毛織物の紡績は、寒くて湿気が多い気候の地域が適しています。イギリスは特に、糸をつむいで布を織る技術の高いフランダース人がオランダから宗教上の迫害を逃れて入ってきたことも相まって、毛織業が繁栄しました。

中国では、孔子が生きていた時代(紀元前551頃〜紀元前479年)の書物に、羊についての記述があります。毛織物技術に関しても、インドやエジプトと同様に発達していたと考えられています。

日本における羊毛・毛織物の歴史

日本の歴史においては、毛織物というとあまりピンとくるものがありませんが、それもそのはず、一世紀ごろから明治時代になるまで、幾度となく羊を輸入してきたものの移植には失敗してきたのです。

織田信長と豊臣秀吉が中央政権をにぎっていた安土桃山時代(1568年〜1600年)には、毛織物として、外国からきた毛氈(もうせん・カーペットのようなもの)や羅紗(らしゃ・表面を毛羽立ててフェルトのようにした厚手の毛織物)が珍重されました。

1876年(明治9年)には、ドイツから技術を導き入れる、日本における最初の毛織物工場が、東京千住に作られて、後々輸入された洋毛をつかった高級な梳毛(そもう)織物が生産されました。

梳毛糸(そもう)というのは、長い毛足を引き揃えて、短い羊毛は取り除いてつくった糸のことで、紡毛糸(ぼうもう)と比べると滑らかで光沢感があるのが特徴的です。

【参考文献】21世紀へ、繊維がおもしろい


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