装束という言葉は、体の保護や威厳を示すために身にまとうものを意味しますが、特に一定の格式にかなった衣服、およびその装いを表します。
宝亀11年(780年)に書かれた『西大寺資材流記帳』の780年の項には、「羅陵王装束・・・・」とあったり、平安時代中期の10世紀後半に成立した日本最古の長編物語である「うつほ物語(宇津保物語)」には、「夏冬のしゃうぞく・・・女のしゃうぞく清げにしゃうぞく・・・」などとの記載があるなど、古くから「装束」という言葉が使用されていたことがわかります。
装束(しょうぞく)とは?
装束は、古くは儀式や行事などの際の室内のしつらえ方も表し、次第に儀式や行事などの際の衣服や中世の朝廷官吏の制服、官服を意味するようになります。
装束という言葉が一般に用いられるようになり、ある種の慣習や慣例にしたがっている衣服という意味で、「火事(火消し)装束」や「能装束」、「白装束」、「冬装束」などという語が生まれました。
婚礼衣装や舞台衣装、民族衣装などという場合の「衣装」も、「装束」と同じように用いられ、英語では「コスチューム(costume)」が語意的に近いです。
能装束(のうしょうぞく)
能装束は、日本の伝統芸能の能を演じる際に着用される衣装の総称です。
老松が描かれた木の板を鏡板と言いますが、鏡板を背景とする簡素な舞台の上で、なおかつ最小限の動きで演じられる能にとって、衣装(能装束)は非常に重要な意味を持っています。
能装束は、単に着飾るための衣装ではなく、役柄の身分や年齢、性格、そして心情を語る大切な要素となっているのです。
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