リンボク(学名:Prunus spinulosa)は、バラ科バクチノキ属の常緑高木で、湿気の多い山地の谷間や温暖な沿海地にある林内などに生え、樹高は5m~15mほどに成長します。
漢字では橉木と書き、若木の葉は針状の鋭い鋸歯(葉の周縁にあるギザギザ)をがあることから、「ヒイラギカシ」の別名もあります。
リンボクが庭木として使われることは少ないですが、9月〜10月頃の秋に咲く花には春の花のような香りがあり、白色の小さな花をいっぱいに咲かせるため、「観賞価値」は高いとされます。
染色・草木染めにおけるリンボク(橉木)
リンボクは、「ヒイラギカシ」という別名の他に、樹皮がサクラに似ており材が硬いため、「カタザクラ」とも言われます。
花の後には長さ7mm~10mmほどの楕円形の果実ができ、開花翌年の4月~6月に熟します。
リンボクの樹皮は黒褐色で光沢を帯びており、皮目と呼ばれるシワが入っています。
樹齢を重ねると、紫あるいは紅色(赤味)を帯びた淡い褐色となり、皮目が目立たなくなります。
木材は、拍子木(拍子を取るための木の音具)や弓などの器具や薪炭(薪や炭など、燃料用に使用する木材)などに利用されました。
染色・草木染めにおいては、リンボクの樹皮の煎汁を用いて、和紙を淡紅色に染めていました。
関連記事:和紙を染める方法と色紙の歴史。漉染め、浸け染め、引き染め、吹き染めについて
かつては、静岡県伊豆地方で作られた修善寺紙として知られている雁皮紙(ジンチョウゲ科の植物である雁皮から作られる和紙)や、薬袋紙の染色に用いられることもありました。
上質な和紙であった修善寺紙は、三椏、楮、雁皮と、「ねり」の材料である「トロロアオイ(黄蜀葵)」を原料としていました。
トロロアオイの根から採れる粘液を使用することで、和紙を漉く際、原料となる繊維の広がりを均一にする効果があります。
修善寺紙は、薄紅色で横に筋があるのが特徴的で、非常に薄い上質の紙として古くから全国に名が知られていました。
リンボクの樹皮の煎汁で染めてから、灰汁媒染することで、淡紅色や茶色系を染められます。
関連記事:染色・草木染めにおける灰汁(あく)の効用と作り方。木灰から生まれる灰汁の成分は何か?
リンボクの葉と根には青酸が含まれており、薬用となります。