絵革(えがわ)は、画革とも書き、革に絵を染めつけたという意味からこの名前があります。
革を染めるのは、平安時代の頃からおこなわれていたとされます。
絵革の歴史
絵模様を革に染めつけたもの(絵革)としては、平安時代にまとめられた三代格式の一つである『延喜式』にもその記載があります。
平安時代後半になると、これまで政治を主導した天皇・朝廷などの公家に代わって、武士が直接政治を動かすまでになってきますが、絵革が盛んに作られるようになったのは、武家政治になってからです。
要するに、鎧や冑などの制作が盛んになってからであり、その縅やその他の飾りとして染革の需要が多くなったことによるものと考えられます。
縅とは、札(鉄や革で作った小さな板)を糸や革ひもなどでつづり合わせることや、その糸や革ひも自体を表します。
染色方法としては、木版による捺染が主に用いられていました。
古い遺品には、「天平」や「正平」などの年号が入っており、俗に「天平革」や「正平革」などと言われています。
模様としては、不動尊(不動明王)、獅子、花、鳥、あるいは縞や格子柄などさまざまありました。
板締めによる革の染色
板締めによる染色技法は、古く夾纈と呼ばれ、板と板の間に生地をきつく挟み込むことで、その部分を防染する技法です。
革に模様を染める際には、布のように防染糊を置いたりして白場を多く残すことが難しいため(模様部分ではなく、地の部分を白く残すこと)、模様染めの際には板締めが多く活用されたと考えられます。
板締めされた(夾纈)菖蒲革と称されるものも有名で、後世になると型紙を使用して染められた絵革も登場してきます。
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革染めにおける燻革(ふすべがわ)
革染めで有名なものに、燻革というものがあります。
燻革とは、燻という言葉にあるように煙を利用して染められた革のことです。
けものの皮の保存方法として原始的に最初に気づいた手段は、煙で燻す「煙なめし」であったとされ、その過程で煙で皮を染色できることが必然的に発見されたと考えられます。
稲藁の煙を使用すると赤と黄色の中間色である燈色から茶色になり、松葉や松根の煙では、鼠色のように染まります。
稲藁と松根を併用すると、鶯色(灰色がかった黄緑色)になります。
煙を利用する染色法は、捺染のように染める対象物の上からプリントしたり、刷毛で染めることはできません。
糊や型紙、糸を巻きつけたりする絞りなどを利用して防染し、下から上に昇っていく煙に当てて、模様を出していくのです。
革は水洗いをすると硬くなるので、防染糊は、水洗いしないで仕上げができる一陳糊(小麦粉、米ぬか、消石灰などを混ぜて、ふのり液を加えて練ったもの)を使用します。
日本における最古の燻革として、東大寺の「葡萄唐草文染韋」があります。
奈良時代に作られたものですが、松葉の煙によるものだと推定されています。
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