藍染の原料である蒅(すくも)

【藍師・水師七悪】藍師が蒅(すくも)づくりにおいて注意をしていた点


藍染の原料となるすくもは、収穫した蓼藍たであいの葉を乾燥させ、水をかけかき混ぜる作業を挟みつつ、約100日以上の発酵期間を経て出来上がります。

すくもづくりにおいては、良い葉藍を栽培することが何よりも大事とされていますが、それと同じくらいに、乾燥葉をすくもと呼ばれる状態にするまでの発酵期間も重要です。

藍の葉を発酵させる際に注意する点として、「藍師あいし水師みずし七悪」という言い伝えがあります。

水師みずしとは、藍の葉を発酵させる際に加える水の水分量を調節する人のことで、古くは専門職としてこの仕事を担っていた人もいたようです。

蓼藍(タデアイ)の乾燥葉

蓼藍(タデアイ)の乾燥葉

藍師・水師七悪

床冷とこびえ・・・覆物が薄すぎて外気に冷やされる

床焼とこやけ・・・床に密着している部分が腐って変色し青味を失う

床黒とこぐろ・・・床焼とこやけの一層過度なもの

上焼じょうやけ・・・発酵過度、覆物が厚すぎる場合に起きる

辛焼からやけ・・・水量が不足した時に起こる

水冷みずびえ・・・水量が多すぎ水が引かぬときに起こる

水腐みずぐされ・・・水冷みずびえが一層過度なもの 「藍師・水師七悪」

すくもづくりは、10月頃の秋口から始まり、冬にかけて発酵の作業が行われます。

その間に発酵に必要な水を与えながらかき混ぜて、藍葉の山を積み直す作業(切り返し)が、1週間に1回ほど行われます。

蒅(すくも)の状態にするため、藍の乾燥葉に水をかけて発酵させる過程であらわれる発酵菌(白い部分)

蒅(すくも)の状態にするため、藍の乾燥葉に水をかけて発酵させる過程であらわれる発酵菌(白い部分)

積み上げた藍の上層、中層、下層の熱によって水のかけ方が異なり、発酵している温度を湯気と手の感覚などで測って水をかける技術が非常に重要で、この技術を持った人を水師みずしと呼んだりしたのです。

発酵の温度の上がり具合をみて、藍葉の積み上げ方や切り返し方も毎回異なっていきます。

「覆物」とは、葉藍が発酵している段階で、外気温がいきおんによって発酵熱が下がりすぎないように、葉藍の上にかぶせる藁でできたむしろ(布団)のことです。

発酵があまり進んでおらず、外気がいきがそこまで寒くなっていない段階では、「覆物」はかぶせませんが、発酵が進み、寒くなってきた段階では、保温のために「覆物」を何重にもかぶせる作業が必要になってきます。

「覆物」を葉藍にかぶせてどれだけ保温するかどうかも、水の調整と同じように大事な作業なのです。

藍師あいしは、五感ごかんを使い、発酵の具合を見ながらすくもを製造していったのです。

【参考文献】『あるきみく117特集阿波藍小話』


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