染料として用いられるものに柿渋があります。
柿渋は、未熟な柿を搾り、渋(シブ)だけを集めた濃厚な液体で、そのまま液体として販売されています。
染色・草木染めにおける柿渋(かきしぶ)
タンニンは、非常に複雑でさまざまな種類のものがあるということですが、分離して生じる物質の種類によって、ピロガロール系のタンニンとカテコール系のタンニンに大別されています。
カテコール系色素は、ピロガロール系に比べて溶解と吸収が劣るものの、「石灰(Ca)」発色や自然の酸化重合作用によって、堅牢度が高く魅力的な赤味の強い褐色を示すことから、各地に特徴的な染色の事例が見られます。
柿渋は、特有の接着性と耐水性を持ち、工芸の各分野に広く利用されています。
耐水性は色素重合によるものであり、接着性は、渋に含まれるペクチンが原因となっています。
柿渋の液を長期間放置したり、ホルマリン液を少し加えると、ペクチンが寒天のようにゲル化(糊料などが混入した粘性のある溶液(コロイド溶液)を「ゾル」と言い、これがゼリー状に固化したものを「ゲル」と言う)します。
そのため、柿渋で染め重ねていくと染色した生地や糸が硬くなっていくため、衣類用のものの染色にはあまり適さないところがあります。
糸染めには特に向いていないですが、型糊での防染での引き染めや色差しには問題がなく、特に和紙には最適な染料液として用いることができます。
型染めに用いる型紙(渋紙)と柿渋

柿渋が塗られた渋紙に彫られた染め型紙
型染めに用いる型紙(渋紙)は、柿渋の性質を活かした良い例です。
その製法は、和紙の漉き目が縦横に交差するように紙を3枚重ねて柿渋で塗り固め、最後に燻煙(煙でいぶすこと)で色素を重合を促して、耐水性のある紙として仕上げるのです。
これによって、型紙は紙の性質としてナイフで簡単に彫れますが、水に溶けず粘りの強い防染糊でしごいても破れない性質を持てるのです。
柿渋と和紙が見事に融合した型紙の発見があったからこそ、日本の文様染めにおける染色技法は飛躍的に発展したともいえます。
【参考文献】『月刊染織α1992年3月No.132』