植物は、降り注ぐ日光の光を、葉でふんだんに受け、光合成を行って二酸化炭素と水で有機化合物を生成しますが、過剰な紫外線は、かえって植物にとって有害となります。
つまり、植物の光合成のためには適度な紫外線は必要ですが、過度な紫外線は細胞を破壊する原因となります。
その紫外線保護のために、フラボノイドが存在し、適度に吸収する役目を果たしていると言えます。
したがって、フラボノイド類は、低地よりも紫外線の強い高地の植物に多く含まれ、樹木よりも草本(茎が木質でない植物)の方が圧倒的に多く含まれています。
目次
植物染料におけるフラボノイド類
ブラボノイド類の植物は、タンニン類との複合的な色素を持つものが多いため、鮮明な黄色を得るためには染料(刈安、黄檗など)を選ぶ必要があります。
色素の性質は安定しており、絹や羊毛のタンパク質繊維には比較的簡単に、美しく染めることができます。
ブラボノイド類は、アルミ塩(AI)で黄色を得ることができる染料です。
媒染剤として使用するものは、ミョウバンが一般的に用いられます。
堅い木の灰に熱湯をかけて、混ぜて放置した液体の上澄み液である灰汁もアルカリ主とした成分で、媒染剤として用いることができます。
古くから灰汁は精錬や洗濯に用いられてきましたが、アルミ成分やその他さまざまな成分を含むため、同じ黄色でも複雑な色相を得ることができます。
新緑期と紅葉期の葉のフラボノイド含有量の比較
『月刊染織α1992年1月No.130』には、新緑の桜葉と紅葉の桜葉を用いて、フラボノイド類の存在理由についての確認実験が行われています。
新緑の桜葉はミョウバン媒染でフラボノイド類の色相傾向が見られ、紅葉の桜葉はタンニン類の色相がみられるとされます。
新緑の桜葉
新緑の桜葉は、光合成を盛んに行っている時期のもので、紫外線を吸収しつつ、過剰に受けないように保護するフラボノイドが大量に存在していると考えられます。
したがって、抽出される色素は、フラボノイド類の傾向がみられると考えられます。
紅葉の桜葉
紅葉した桜葉は、すでに光合成の必要がなく、冬に向けて落葉しなければならなりません。
そのため、フラボノイド類の存在はなく、強い紫外線を直接受けて細胞の離層を進め、紅葉(もしくは黄変)し、落葉していきます。
したがって、抽出される色素は、フラボノイド類の色相傾向はみられないと考えられます。
紅葉に見られる色素成分
もみじの紅葉に見られる赤色系成分はアントシアニン(鮮明な赤)で、桜や栗などの黄色い葉はカロチノイド(黄色)を含みます。
そのほかに、フロバフェンという褐色のタンニン系の化合物も有しており、アントシアンやカロテノイドが酸化分解して、フロバフェンになっていくものだと考えられています。
これらの葉から成分を抽出すると、アントシアニンとカロテノイドは染め色素としては耐えられずに消滅し、一方でタンニン系のフロバフェンは染色に作用します。
また、もともと植物に含まれるタンニン類も、染色に作用するものと考えられます。
まとめ
結論としては、桜の葉は落葉期の紅葉過程においてフラボノイド色素が消失し、その結果紅葉が促進される一方で、タンニン系色素が生成されることが分かります。
秋の美しい紅葉の赤や黄色の背景には、タンニン色素が隠れているのです。
【参考文献】『月刊染織α1992年1月No.130』