奈良時代に織られた布の一種で、麻(苧麻)を原料とした平織物に「貲布」と呼ばれるものがありました。
古くは植物繊維を原料とした平織の布の中でも最も上質で、糸は細く、太さも整い、薄く軽やかなものを表したとされますが、後世には粗く織った麻布を意味するようになりました。
麻(苧麻)を原料とした平織物である貲布(さよみ)
「さよみ」の「よみ」は、一定の幅の麻布を織るために必要な経糸の量で、当時の一寸幅に対して、80本の経糸を一単位とした呼び方でした。
そのため、「貲布(さよみ)」とは、「よみ」が細かいという意味を表しました。
平安時代にまとめられた三代格式の一つである『延喜式』によれば、貲布の産地は安房・上総(現在の千葉県)であったようです。