寓意という言葉は、「ある意味を直接には表さず、別の物事に託してほのめかすこと」を意味します。
デザインにおいても、あるデザインを描くことで別の意味をほのめかすこと(寓意文)が世界中でおこなわれてきました。
デザインにおける寓意文(ぐういもん)
寓意文(寓意模様)としては、わかりやすい例で言えば、オリーブ(学名:Olea europaea)が平和を意味したり、月桂樹(学名:Laurus nobilis)が勝利の意を表したりするなどが挙げられます。
宗教的な意味を寓する(直接示さないで他の事物に託して表現する)ものには、キリスト教に関する十字や鳩、子羊や葡萄、仏教においては法輪や蓮花(ハスの花)などがあります。
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中国においては、例えば牡丹が金持ちで地位や身分が高いこと(富貴)を表したり、コウモリ(蝙蝠)の「蝠」が「福」と同じ発音のために吉祥(めでたい兆し)とされたり、鶴亀が長寿の意味を表すなど、その他にも非常に多くの事例が挙げられます。
日本における寓意文
日本においては、中国の文化からの影響を受け、伝来した寓意文を好んで使用してきました。
中国からの影響だけでなく、日本特有の寓意文もさまざま生まれます。
例えば、白い鏡餅を描いて「城持」(城を所有している武将や大名の意)を表したり、これを黒く塗りつぶして「石持」としたりし、いずれも武士に縁起の良い模様(文様)として知られていました。
江戸時代には、「判じ物(はんじもの)」と呼ばれる文字や絵画に隠された意味を当てるなぞ解きが流行し、判じ物文様(はんじものもんよう)として生まれた模様が多くありました。
例えば、「鎌の絵」と丸い輪「○」と、「ぬ」の三文字で「構わぬ(かまわぬ)」と読ませるために作られた模様である「鎌輪奴文」や斧(よき)と琴と菊の花の模様を染め出して「良き事聞く」という縁起がよい意味を込めた「斧琴菊文」など、知的に寓意を表現する模様(文様)が流行しました。
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