「片輪車文」は工芸模様(文様)の一つとして、デザインに用いられてきました。
王朝貴族の乗り物であった牛車の車輪は木製で、乾燥すると割れてしまうため、使用しない時は川の流れの中に浸しておくことがありました。
その情景を図案化したものが、片輪車文です。
デザインにおける片輪車文(かたわぐるまもん)
片輪車文は、平安時代後期から料紙下絵(料紙に絵が描かれたもの)に多く見られ、現代まで幅広くデザインに使用されてきました。
片輪車文の名称は、二つの車輪が離れ離れになっていることに由来するとも言われます。
車輪は流水に隠されて基本的には半分しか表現しませんが、流水が省略されて車の半輪だけを描くことも多くあります。
作例としては、平安時代に作られたとされる手箱である「片輪車螺鈿蒔絵手箱」が有名です。
室町時代の15~16世紀頃、長野県上田市あたりで出土した「片輪車双雀鏡」も片輪車文が美しく鋳造されています。