デザインにおける雲(くも)。雲文(うんもん)の種類や意味について


雲(くも)は気象状況や季節によってその形は様々に変わりますが、雲の模様(文様)は古くから意匠いしょう(デザイン)に活用されてきました。

雲の模様(文様)は「雲文うんもん」とも呼ばれ、中国や朝鮮ではさまざまなデザインが作られてきました。

中国では、山中の巨岩きょがんから雲気うんきが湧き出るとされたことから、「雲気文うんきもん」と呼ばれました。

日本では奈良時代に中国の影響を受けて、さまざまな意匠いしょう(デザイン)において雲文うんもんが取り入れられるようになったとされます。

雲文(うんもん)の意味

古くから使用される模様(文様)には、それぞれ何かしらの意味が込められることがよくありました。

例えば、古代ギリシャの神殿の柱頭ちゅうとう(柱とはりの接する部分)の建築様式に使用されるアカンサス(Acanthus mollis)の葉は、不死や再生の象徴として、ギリシャ時代から長くヨーロッパの歴史の中で使用されてきた模様(文様)でした。

アカンサスの葉は、のちに「ローマ巻き」とも呼ばれる唐草文様からくさもんよう唐草模様からくさもよう)としてオリエント(東洋)に伝わっただけでなく、中国や日本にも、唐草文様の原点として伝わったとも考えられています。

雲の模様(文様)に関しては、長く尾を引いて空を流れる優美な形の「天平雲てんぴょうくも」や、万年茸まんねんたけの形に似た「霊芝雲れいしぐも」が多く用いられ、これらは瑞祥ずいしょう(めでたいことが起こるという前兆)などの意味を持っていました。

縁起が良いとされたのは、興国こうこく(国の勢いを盛んにすること)の気運がみなぎるところに雲が動き、瑞祥ずいしょう(めでたいことが起こるという前兆)の際には雲が四方に広がっていくというような中国思想からきています。

瑞雲ずいうん(めでたいことの前兆として現れる雲)は、雲文うんもんの主流で、松竹梅や鶴などの吉祥文様きっしょうもんようと組み合わされてよく表現されました。

平安時代以降の公家くげ社会において装束しょうぞくや調度、輿車よしゃ、建築などに用いられた伝統的な文様を有職文様ゆうそくもんようと言いますが、雲がその中の一つとして定着したのは、やはりその縁起の良さも理由として考えられます。

雲文(うんもん)の種類

雲文うんもんには、さまざまなものがあります。

  • 雲立涌文くもたちわくもん・・・蒸気が立ち昇り(立涌たてわく)、雲がわき起こる様子を表した文様
  • 流雲文りゅううんもん・・・流れたなびく雲の様子を表した文様
  • 飛雲文ひうんもん・・・雲の飛ぶ様子を表わした文様
  • 瑞雲文ずいうんもん・・・めでたいことの前兆として現れる瑞雲ずいうんを表した文様
  • 雲丸くものまる・・・雲を丸く表した文様
  • 雲菱くもびし・・・菱形ひしがたのシルエットに、渦巻く雲を表した文様
  • 渦巻雲うずまきうん・・・渦巻いたように雲を表現した文様
  • 枯木雲・・・朽木の虫食い跡を図案化し、雲がたなびいている様子をを表した文様

平安時代、鎌倉時代に広まったデザイン様式に葦手紙あしでえの雲形や洲浜形すはまがた(三つの輪を少しずつ重ねたような輪郭を持つ形)に似ている棚引雲文たなびきぐももんなどもあります。

雲の模様(文様)によって全体のデザインの省略と分節を行い、限られた画面に広がりと変化を与える手法がよく用いられたのです。

江戸時代の小袖模様(文様)においてもこの手法が採用され、風景模様や御簾すだれ模様などに雲文うんもんを配し、必要以外のデザインの要素を消し去り、想像の余白を残して全体の雰囲気が作り出されていたのです。

雲龍文(うんりゅうもん)

雲龍文うんりゅうもんは、雲を呼ぶ竜を組み合わせた中国伝統の模様(文様)です。

龍は雲を起こし、雨を降らせ、水に潜み、天に昇る神聖なものとされてきました。

日本において、雲龍文うんりゅうもんは奈良時代〜平安時代に中国に伝来したとされます。

鎌倉時代以後、武将の間で好んで用いられ、「白平絹雲龍文描絵陣羽織」などの遺品があります。

参照:陣羽織_白生絹地雲龍描絵模様(模造)

能装束のうしょうぞくには、「雲に龍丸」など種々のデザインがあります。

参照:紅地雲菱に龍丸文舞衣べにじくもびしにりゅうのまるもんまいぎぬ


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