八重山上布は、別名「赤縞上布」や「白上布」とも呼ばれ、多くの伝統を持つ八重山地方における代表的な織物です。
琉球王朝時代に、人頭税下(納税能力に関係なく、全ての国民1人につき一定額を課す税金)で貢納布として織らされていたものが現代に残ったもので、苧麻の白地に紅露(ソメモノイモの根塊)で絣を摺り込み、捺染した麻織物を主に表します。
八重山上布(やえやまじょうふ)とは?
八重山諸島は、沖縄の南端にあり、その中心となるのが石垣島です。
八重山上布は、その歴史は古く、17世紀ごろから織られています。
夏用の着尺として、白地に焦茶の絣が織り出されています。
原料は、この島に自生していた苧麻が元々は使用されていましたが、のちに経糸に木綿を用い、緯糸に苧麻を使った白地絣の交織布が作られるようになります。
八重山地方も、明治維新までは、薩摩藩の藩政下に入っていたため、この地の麻織物は、「薩摩上布」の名前で販売されていました。
したがって、「八重山上布」という名前は、新しい呼び名なのです。
沖縄の織物の中で、摺り込みの捺染が行われてたのは、八重山上布だけで、この手法を八重山地方の方言で「カシリチキー」と呼んでいました。
「カシリ」は、「絣」が語源とする説もあります。
八重山上布の技法
八重山上布の絣糸を染めるための茶色の染料として、「染物芋」(紅露・クール)が知られています。
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和名の「そめものいも」は、地中に80㎝ほどにも成長する黒みがかった赤色の塊根(芋)があり、これが赤褐色の色素を含み、染色に使用することから由来しています。
そめものいもは、マングローブの木(漂木)や車輪梅などと共に、魚介類を捕獲するために用いる漁網を丈夫にし、扱いやすくするために使用されたカテコールタンニン系の染料です。
マングローブの樹皮にはタンニンが多く含まれているので、抗菌や防腐の効果も高いとされています。
紅露(クール)を竹ベラにつけ、糸に摺り込んで、絣糸を作ります。
乾燥させた絣糸は、地糸を別々に巻き取って織り機の上部に経糸、下部に地糸を取り付け、「短機」という高機で織られます。
織り上がった布は、1日8時間ずつ、1週間ほど天日に干し、この間に独特の茶褐色に色合いが落ち着いてきます。
織り上がった後の天日乾燥がしっかりできたかどうかが、品質に大きく影響したようです。
上質な八重山上布は、1反の重さが約300gとして、軽いものほど質が良いとされました。