菖蒲は、江戸時代には品種改良が始まっていたというくらい、古くから日本で愛されてきた花です。
音が「勝武」や「尚武(武を尚ぶ)」に通じることから、菖蒲を文様化した菖蒲文が武人に好まれて用いられました。
デザインにおける菖蒲(しょうぶ)・菖蒲文(しょうぶもん)

デザインにおける菖蒲(しょうぶ)・菖蒲文(しょうぶもん)
菖蒲文は、革を染める際の文様(菖蒲革)として活用されたことで知られ、中心に花状の形をおき、左右対称に葉を並べるように簡略化されたデザインが用いられました。
模様を並べて帯状に配したり、刃文の形状の一つで規則正しく繰り返す波状の文様である「互の目(ぐのめ)」のように模様が織り出されたりしました。
菖蒲革(しょうぶがわ)

白く小さな菖蒲の模様(小紋柄)が染め抜かれた菖蒲革・菖蒲文
菖蒲革は、主に藍染で染められた地に、白く小さな菖蒲の文様を染め抜いたもので、甲冑や武具に多く用いられました。
革染における細かい模様の代表的なものであったことから、のちには歯朶革(藍地にシダの葉の形を白く染め抜いたもの)や小桜革(藍地に小さな桜の花を白く染め抜いたもの)などの細かい模様も菖蒲革と呼ばれるようになります。
菖蒲革と同じように、褐色に藍染で染められた衣服なども武士の間で好まれます。
褐色に藍染で染められた軍旗をもって戦に勝ったことから、縁起の良いものとして「勝染め」と言うようになったという説や、「かちんの裃」と唱え、藍染のものを用いて主君の前に伺うことがめでたい先例となり、武将が勝ちを祈って藍染を勝染めと言うようになったとも言われます。
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菖蒲革の種類
菖蒲革の図柄には花をつけたもの、葉だけのもの、菖蒲ではないものがあり、形や組み合わせによって非常に多くの種類があります。
菖蒲をかたどったもの・・・薄菖蒲革・花菖蒲革・杉立菖蒲革・堅菖蒲革・横菖蒲革・釘菖蒲革など
他のデザインと菖蒲の組み合わせ・・・勝見菖蒲革・楓鹿菖蒲革・葦雁菖蒲革・野馬菖蒲革など
菖蒲をかたどらないもの・・・瓜形菖蒲革・角瓜形菖蒲革・水菖蒲革・家形菖蒲革・蜻蛉菖蒲革・異文菖蒲革など