絹紡とは、繭から生糸を取る時に残った部分(製糸屑)や屑繭をほぐしたものなどの「副蚕糸」を原料にして、糸にする(紡ぐこと)を表します。
紡いだ糸は、「絹紡糸(スパンシルクヤーン)」などと言います。
日本においては、明治時代中期からは紡績技術が発達し、副蚕糸から絹紡糸がつくられてきました。
絹紡糸を用いた織物は、主に和装や風呂敷などに用いられてきました。
目次
絹紡糸(けんぼうし)の原料
絹紡糸の原料は、製糸屑や屑繭です。
屑繭(くずまゆ)
屑繭とは、生糸を取り出せない繭のことです。
糸口が見つからない繭やつぶれてしまったものなどは、良い生糸が取れません。
例えば、繭の中で成長した蚕が、成虫(蛾)になってた際に繭に穴を開けてしまった場合、穴が空いているので、糸を長く取り出すことができないため、そのような「屑繭」は絹紡糸の原料に回してしまいます。
屑糸(くずいと)
屑糸は、製糸の工程で発生します。
蚕が繭を作る際に最初に吐き出す糸(繭の糸口から50mほどの部分)は、生皮苧と言います。
生皮苧の部分は不規則な太さで硬い糸質であるため、生糸には使用されません。
一方、生皮苧の部分とは反対に、繭から糸を取り出す最後の50mほどは蛹に近く、蛹の油がついているため使用されません。
そのため、一つの繭が1300mの糸でできている場合、屑糸は約100m分発生するのです。
絹紡糸(けんぼうし)のメリット・デメリット
絹紡糸のメリットとしては、以下のようなものがあげられます。
絹紡糸のメリット
- 製糸屑や屑繭を使用して糸を作ることができるため、資源の有効活用になる
生糸と比べると、価格が安い - 糸が均一で、生糸と比べると染色や機織りが行いやすい
- 保湿性、吸水性、放湿性(吸収した水分を放出する性能)に優れている
- 短い繊維を撚り合わせて糸にしているため、生糸と比べると糸の内部に空気を多く含み、ふんわりとやわらかな肌ざわり
絹紡糸のデメリット
絹紡糸のデメリットとしては、以下のようなものがあげられます。
- シルクの特徴である光沢感が生糸に比べると少ない
- 短繊維できているため、糸の表面が生糸に比べると毛羽立ちやすい
- 屑糸、屑繭から製造されているので、あまりイメージが良くない
- 糸自体にシルクのようなハリ感があまりなく、くたくたとした風合いになる
- 色が生糸と比較すると、綺麗に染まらない
生糸と比べると価格が安いメリットがありますが シルクとしてはどうしても絹紡糸に見劣りしてしまいます。