老松(おいまつ)模様(文様),「糸入れ」された伊勢型紙

デザインにおける老松模様(おいまつもよう)・老松文(おいまつもん)


老松文おいまつもんは、松模様(文様)の一つです。

能舞台の鏡板かがみいたに描かれている老松の図は、典型的な老松文おいまつもんです。

老松(おいまつ)横浜能楽堂 舞台正面

老松(おいまつ)横浜能楽堂 舞台正面,yoshi_ban, CC BY-SA 3.0 , via Wikimedia Commons,Link

教訓抄きょうくんしょう」という鎌倉時代に記された日本国最古の舞楽書によると、松はとくに芸能の神様の依代よりしろ(神霊が依りく対象物のこと)であり、能舞台の鏡板かがみいたに描かれている松の絵のルーツは、奈良の春日大社の「影向の松(よごうのまつ)」に由来しているとされます。

デザインにおける老松模様(おいまつもよう)・老松文(おいまつもん)

老松模様(文様)伊勢型紙

老松模様(文様)伊勢型紙

松は古くから、神様が天上界から地上界に降りてくることを「待つ」神聖でめでたい木とされてきました。

室町時代初期の猿楽師さるがくしであった世阿弥ぜあみは、父の観阿弥かんあみとともに猿楽さるがく(能楽のかつての呼び名)を発展させ、今日にまで続く能楽のうがくの基礎を作りました。

世阿弥ぜあみが作る演目のほとんどは、とてもこの世のものとは思えない物語であったため、神霊に降りてきてもらわないことには話が始まらず、神が地上界に降りてくる足がかりとしての老松が必要だったのです。

老松文おいまつもんは、染織品のデザイン(能装束のうしょうぞくなど)にも用いられてきました。

例えば、林原美術館に所蔵されている江戸時代に作られた能装束のうしょうぞくの「青海波老松文金襴袷狩衣せいがいはおいまつもんきんらんあわせかりぎぬ」には、青海波せいがいは模様とともに老松が描かれています。


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