縅(威)とは、戦いのとき身を守るために着用する武具である甲冑において、小札を革紐や組紐などで繋ぎ綴じたものです。
小札を縅毛(小札を綴じ付けるために用いられた組紐や革)で綴じ付ける動作のことを、「縅す」と言います。
小札とは、甲冑(鎧)を構成するあらゆる場所に用いる重要な構成要素で、一般的には革または鉄板金を素材とし、形は、名前の通り小さい短冊形です。
小札を横方向に革紐で繋ぎ、仕上げに漆を何層にも塗ることで、堅牢な「小札の板」となります。
目次
縅(おどし)とは?
縅は、「緒通し」の約言とも、敵を威嚇する意味とも言われます。
平安時代から鎌倉時代の鎧は、縅の色や配色が重要な表現要素であったため、工夫を凝らして美しいものが作られました。
縅による色合いの美しい鎧には、衣服の襲色目と同じように、それぞれに趣のある名前が付けられました。
平安時代のには、「王朝の色」とも呼ばれる重ね染めを巧みに駆使しながら生まれた優雅な色彩による女性の重ね着の配色美を「襲色目」といい、その色合いと調和は、常に四季の草花や自然の色などに結びついていました。
縅は、兜の錣や鎧の大袖や草摺などに多く用いられました。
戦国時代に大鎧の着用が減少し、当世具足が愛好されるようになると、武装美も縅による彩色美に、鉄銅や数々の変形具足による形と材質の変化が加わって大きく変化していきました。
縅糸(おどしいと)と縅毛(おどしげ)
鎧の縅に使用する糸を縅糸といい、広義には縅毛と同様に革や布・糸製のすべての紐を含みますが、狭義には縅糸は組紐のみを表します。
縅の名称
縅の名称は、縅毛の質や色、染め模様(文様)、縅す方法(縅毛の綴じ付け方)などよって区別されていました。
縅毛の質による区別
革縅
綾縅
糸縅
縅毛の色や染め模様(文様)による区別
緋縅
色糸縅
黒糸縅
小桜縅
品革縅
縅す方法による区別
卯花縅
沢瀉縅
端取縅
匂縅
裾濃縅