染色・草木染めにおける野薔薇(ノイバラ)。薬用効果について


野薔薇のいばら野茨のいばら)(学名Rosa multiflora)は、野生のバラにおける代表的な品種です。

花屋などで観賞用として売られているバラの原種の一つであり、野薔薇のいばらから数々の品種が作り出されてきました。

英語のRosaはラテン語のRosaに由来し、バラ属(Rosa)に属するものは非常に多く、さまざまな種類を含んでいます。

multifloraは、花が房状に咲くことから、ラテン語で「花が多い」を意味します。

野薔薇(ノイバラ)とは

野薔薇のいばらは、高さ1m〜2mほどに生長し、初夏の頃に日当たりの良い各地の山野で、2cm〜3cmほどの白色、または薄紅色の綺麗な花を咲かせます。

野薔薇,Multiflora Rose flowers along a walking path in the Franklin Farm section of Oak Hill, Fairfax County, Virginia

野薔薇,Rose,Multiflora,Famartin, CC BY-SA 4.0 via Wikimedia Commons,Link

秋ごろには、卵の形に近い小さな偽果ぎかが赤く熟します。

Rosa multiflora SCA-181108-07

野薔薇の果実,Rosa multiflora,R.A.Nonenmacher, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons,Link

種子が入っている本当の果実は、赤く熟した偽果ぎかの中に入っている黄色い粒です。

染色・草木染めにおける野薔薇

染色において、野薔薇のいばらをはじめとするいわゆるバラに属する植物が、染料植物として使用される例がたくさんあります。

上村六郎著『民族と染色文化』には、染色における野薔薇のいばらの利用がとりあげられ、鉄媒染で黒みを帯びた黄色である暗黄色あんこうしょく、ミョウバン媒染で黄色と記されています。

山崎青樹著『草木染辞典』には、野薔薇のいばらなどのバラの茎や葉っぱ、落ちた花を利用して、すず媒染で黄味のある白茶色、銅媒染で黄味がかった茶色、鉄媒染で銀色のようなほんのり青みを含んだ明るい灰色である銀鼠ぎんねずから鼠色ねずみいろに染めると記されています。

野薔薇の薬用効果

野薔薇のいばら偽果ぎかや果実は、古くから薬用としても活用されてきました。

偽果ぎかや果実は、営実えいじつと呼ばれる生薬として知られます。

営実えいじつの薬用効果としては、主に下剤として利用され、利尿、解毒、脚気、リウマチ、月経不順などにも応用されています。

営実えいじつは、日本薬局方にもきちんと記載がある薬物で、中国最古の薬物学書である『神農本草経しんのうほんぞうきょう』にも収録されています。

営実えいじつは、偽果ぎかが熟する一歩手前の多少青みがかった果実もあることに採集して、陰干ししたもので、偽果ぎかをそのまま乾燥させたものや中の果実だけを取り出したものがあります。

成分として、果実にフラボノイドのムルチフロリンAやムルチフロリンb、ムルチノシドA、ムルチノシドb、カロチノイド色素のリコピンなどが含まれます。

花には、柿の葉に含まれることで知られるフラボノイドの一種であるアストラガリンが含まれています。

【参考文献】『月刊染織α 1984年No.39』


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