桃(もも)(学名Prunus persica)は、バラ科スモモ属の落葉低木から小高木(樹高2m~3m)で、食用や観賞用として世界各地で品種改良されて栽培されています。
桜は、中国が原産といわれ、ヨーロッパへは紀元前1世紀ごろに渡来し、日本においても『古事記』や『日本書紀』に記載があり、果樹としての栽培は江戸時代になったから盛んになったとされています。
3月下旬から4月頃にピンク色から白色の花を咲かせ、八重咲種など観賞用の品種も古くからあり、果実がは6月〜7月ごろに熟します。
染色・草木染めにおける桃(もも)
7世紀後半から8世紀後半(奈良時代末期)にかけてに成立したとされる日本に現存する最古の和歌集である『万葉集』には、4,500首以上歌が集められていますが、桃を詠んだ歌が7首が収められています。
古くから桃を染色に利用したことはなかったと考えられますが、後藤捷一(著)山川隆平(著)『染料植物譜』の中に、熊本地方では樹皮の煎汁を染料にしたとの記載があります。
桃の幹からとった幹材はよく染まり、小枝や樹皮は生のままで使用しないとあまり染まらず、緑葉は黄色を染めることができます。
桃の幹材は、保存しておいて使用する前に細かく削ります。
桃で洗柿色(あらいがきいろ)を染める
桃を染色に使用する場合、木灰に水や熱湯を混ぜてつくる灰汁や酢酸アルミを媒染剤に使用すると、柿色が淡くなったような橙色に染まります。
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絹糸を染める一例として、以下のような流れがあります。
①枝の材を細かく刻んだもの500gを6リットルの水に入れて熱し、沸騰してから20分間熱煎して煎汁をとり、同じようにして、4回まで煎汁をとり、1番〜4番までを混ぜて染液とする
②染液を火にかけて熱し、絹糸1kgを浸して10分間煮染したあと、染液が冷えるまでか一晩染め液に浸しておく
③灰汁6リットル、もしくは酢酸アルミ40gを15リットルの水に溶かした液に、染糸を浸して30分間媒染する
④染液を再び熱し、媒染した糸を浸して15分間煮染し、染液が冷えるまで浸しておき、水洗いして天日の元乾燥させる
⑥さらに染め重ねる場合は、4回まで煎汁をとった桃を同じようにして、8回まで煎汁をとり、染液として、乾かした糸を再び浸し、15分間煮染し、染液が冷えるまでおいておく
⑦染め重ねたあと水洗いして、天日の元乾燥させる
上記の工程で染色し、酢酸アルミで媒染する代わりに酢酸銅を使用すると、檜の樹皮のような黒ずんだ赤茶色である檜皮色に染まります。
鉄媒染で、紫がかったような褐色(紫褐色)に染まります。
枝材、樹皮、小枝など使用する箇所によって、色合いが若干異なってきます。
緑葉を煎じた場合は、酢酸アルミでやや青味のある黄色を染め、鉄媒染で鶯の羽のような暗くくすんだ黄緑色(鶯色)に染まります。
【参考文献】『月刊染織α1986年2月No.59』