紋織りという言葉は、平織り、綾織り、朱子織りなどの異なる組織や、異なる色糸を組み合わせることによってできる織物の総称として使用されます。
紋織りの種類には、ラペット織り、ドビー織り、ジャガード織りなどがあります。
目次
ラペット織り
ラペット織りとは、平織りの生地にドット柄、幾何学模様やレース柄などの小さな柄のある模様を刺繍したような織物のことを指します。
イラクやサウジアラビアなどのアラブの人々がターバンとして頭にかぶっている布地は、ラペット織りの機械で織られたものが多く使用されます。
このターバンはヤシマグといい、1m〜1.5m四方の正方形の織物で、砂漠地帯の多い中東圏に欠かせないものです。
ヤシマグは、強い直射日光や風で飛んでくる砂を避けたり、気温が下がった時のために防寒具として使われます。
顔を布で被っても重たくならず、できるだけ先の方が見えるように、細番手の糸を使用した薄い生地が用いられています。
ドビー織り
ドビー織機で織った紋様のある織物を、ドビーやファンシー・クロス、ポプリン(ブロードクロス)などと言います。
織物で経糸を一本ごとに上下させる仕掛けの部分のことを綜絖と呼びますが、この綜絖をつけることで、小柄の模様を表現できます。
綜絖は48本までつけられるとされますが、実際に生産の現場で多く利用されているのは16本程度です。
ポプリンと呼ばれる織物はイギリスでの呼び方で、アメリカではブロードクロスと呼んでいます。
経糸が緯糸よりも細い糸で織られた平織物で、経糸の方が緯糸よりも密度が1.5倍~2倍ほど高く織られているため、横方向に細かい畝があるのが特徴的です。
ポプリンは、糸を使用することによって高級シャツや高級ブラウスなどに使われることが多いです。
ジャガード織り
ジャガード織機で織った、比較的大きな柄が入った織物がジャガードと呼ばれます。
フランスの発明家ジョゼフ・マリー・ジャカール(1752年〜1834年)が、1804年に複雑で精緻な模様柄を織り出す装置を備えた紋織機(ジャカード織機)を発明しました。
英語読みでジャカード(Jacquard) ですが、生地は「ジャガード」と呼ばれることが多いです。
それまでの紋織機は、日本では「空引き機、高機、紋引き機」などといい、中国では「花機」あるいは「大機」と呼んで古くからありました。
複雑な模様を織り出すために、経糸に特別な紋綜絖をつけて機台の上部に吊るし、これを織機の上に昇った引き子が決められた通りに上下させ、別の織り子が緯糸を打つ仕組みでした。
ジャカールは、この仕組みを完全に自動化し、デザインに沿って厚手の紙に穴を開けた紋紙(ジャカードカード、パンチカード)が、綜絖のフック(鉤)を誘導して経糸を上下させる仕組みにしました。
紋紙(ジャカードカード、パンチカード)に開けた一つ一つの穴が、経糸が表に出るか緯糸が表にでるか等の情報をもたせており、複雑な模様を織りあげられるのです。
開発当時から、400本にもおよぶ経糸をコントロールしていたようです。
紋織物の自動化は、18世紀に絹(シルク)の紋織物で有名であったフランスにおいて省力化の要求が大きかったことが発展の要因として挙げられます。
日本においては、明治時代の初期に佐野常民が1873年にオーストリアで購入したジャガード織機を、1875年に東京勧業試験所に設置したのが始まりとされます。
京都では、ジャガード織機の導入によって、西陣織の紋織技術の機械化が大きく進展していきました。
現在は、コンピューター化もされており、電子ジャガードとも呼ばれます。
ドビー織りとジャガード織りにおけるクリップ・スポット
ドビー織りやジャガード織りで、紋織りの模様を飛び飛びで配置すると、裏側か表側に浮き糸ができます。
浮き糸を切り取り、切り口の毛を立てると、糸の端っこがふくれ上がり、糸が抜けにくくなると同時に、それが装飾になります。
飛び飛びで配置された織模様の間の浮き糸を切り取る手法を、クリップ・スポットといいます。
切り口が表側にあるものを表切り、裏側にあるものを裏切りといいます。
表切りの場合は、カットした後の毛羽立ち模様が表にでるので、立体的な模様を出せます。
ローンやボイルなどの薄い織物にクリップ・スポットを施すと、刺繍のようにきれいな模様を出せます。
カットボイルと呼ばれる生地は、この手法使って織られています。
ちなみに、織りあがった生地の緯糸を部分的にカットして柄を出した生地を、カットジャガードと呼んだりします。
コンピューターの起源とも言われるジャガード織機
ジャガード織機は、今私たちが日常的に使っているコンピューターの起原とも言われるのです。
下記の動画をみてみると、ジャガード織りがどうやってできているのかが、なんとなく理解できるかと思います。
【参照】How was it Made? Jacquard weaving