桑は、クワ科の落葉喬木で中国において古代染料の一つとして使用され、漢方にも用いられてきました。
葉は蚕の重要な飼料となりますが、養蚕以外にも、枝や根皮を煎じて利尿薬、鎮咳剤、養毛料、便秘薬など、さまざまな用途に薬用として利用されていました。
幹は直立して高さ10メートルほどにも成長しますが、栽培種は毎年、木の枝が刈られるので低い木にみえます。
染色・草木染めにおける桑染(くわぞめ)
桑の木,Morus australis,小石川人晃, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons,Link
桑染は、木の根皮で染めたのが最初とされ、日本には奈良時代ごろにはすでに伝えられていたようです。
大宝・養老令の『衣服令』には、桑染の色がとりあげられ服色条の13番目に「桑(クハソメ)」とあります。
縹の下、黄の上になっていることから、黄が無位の服色なのでおそらく「桑(クハソメ)」も無位の人の服色だったと考えられます。
井原西鶴の処女作で天和2年(1682年)に刊行された「好色一代男」には、「三人ながら桑染の木綿足袋はかれしに」という記述があります。
桑染の色合い
江戸時代の『諸色手染草』(1772年)には、「桑茶」として赤味のある黄茶色の色帛が貼ってあります。
寛政3年(1791年)に刊行された江戸深川仲町の岡場所の風俗を描いた『仕懸文庫』には、「くわちゃかえしの小もん、ちりめんのひとへもの」とあり、江戸時代前期に書かれた『万染物張物相伝』には、「くわそめ、右ハ白地のうへくわの根よくせんじ、十ぺん程もそめ、又湯にみやうばん入ひき申候」というようなど、桑染が江戸時代に行われていたとされる記述が多く残っています。
古い時代の桑染がどの部分を用いて染めていたのかははっきりとしませんが、江戸時代の文献では上記のような桑の根っこを用いて染色する事例がありますが、おおよそ桑の幹材を用いていたと考えられます。
本来の桑染の色合いは、桑の根皮で染めた茶色であり、のちに木の皮を用いて同じような色が染められるようになったようです。
樹皮の煎汁は、楊梅皮(ヤマモモの樹皮)と椿の灰汁で媒染することで、黄色の染料にもなるようです。
【参考文献】『月刊染織α1993年4月No.145』