小葵を文様化(模様化)した小葵文は、平安時代にはすでに使用された文様(模様)で、皇族の装束から、宮中のふすまや几帳など調度にも利用されていました。
小葵とは、銭葵(学名:Malva mauritiana)の異称で、「銭葵」という名前は、丸みのある花や葉の形が「銭」に似ていることからその名が付けられたとされます。
デザインにおける小葵文(こあおいもん)

小葵,銭葵(ぜにあおい),阿橋 HQ, CC BY-SA 2.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/2.0>, via Wikimedia Commons,Link
平安時代以降の公家社会において装束や調度、輿車、建築などに用いられた伝統的な文様を有職文様と言います。
小葵文は、有職文様の一つとして、下襲や衵、直衣や半臂などの織文に用いられました。
熊野速玉大社が所蔵する「衵萌黄小葵浮線綾丸文二重織(1390年)」のように、二重織物の地紋に小葵がよく用いられました。
室町時代に作られたとされる「阿須賀古神宝類 衾 白小葵文浮線綾丸文二重織」や、「阿須賀古神宝類 袍 白地小葵文様固綾」などの遺品も、地紋に小葵が織り込まれています。