デザインにおける小葵文(こあおいもん)


小葵こあおいを文様化(模様化)した小葵文こあおいもんは、平安時代にはすでに使用された文様(模様)で、皇族の装束から、宮中のふすまや几帳きちょうなど調度ちょうどにも利用されていました。

小葵こあおいとは、銭葵ぜにあおい(学名:Malva mauritiana)の異称で、「銭葵ぜにあおい」という名前は、丸みのある花や葉の形が「銭」に似ていることからその名が付けられたとされます。

デザインにおける小葵文(こあおいもん)

小葵,銭葵(ぜにあおい)錦葵 Malva sylvestris v mauritiana -香港花展 Hong Kong Flower Show- (9190650345)

小葵,銭葵(ぜにあおい),阿橋 HQ, CC BY-SA 2.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/2.0>, via Wikimedia Commons,Link

平安時代以降の公家くげ社会において装束しょうぞくや調度、輿車よしゃ、建築などに用いられた伝統的な文様を有職文様ゆうそくもんようと言います。

小葵文こあおいもんは、有職文様ゆうそくもんようの一つとして、下襲したがさねあこめ直衣のうし半臂はんぴなどの織文に用いられました。

熊野速玉大社が所蔵する「あこめ萌黄小葵浮線綾丸文二重織もえぎこあおいふせんりょうまるもんふたえおり(1390年)」のように、二重織物の地紋に小葵がよく用いられました。

室町時代に作られたとされる「阿須賀古神宝類あすかこしんぽうるい ふすま 白小葵文浮線綾丸文二重織しろこあおいもんふせんりょうまるもんふたえ」や、「阿須賀古神宝類あすかこしんぽうるい うえのきぬ 白地小葵文様固綾しろじこあおいもんようかたあや」などの遺品も、地紋に小葵が織り込まれています。

参照:「表着 萌黄地小葵浮線綾模様二陪織物(模造)