綿・麻以外の植物繊維。カポック、パイナップル繊維、ヤシ繊維、芭蕉繊維。


植物繊維といえば、綿と麻に代表されますが、その他にも実用的に繊維として使用されている植物があります。

カポック(パンヤ)

カポック(パンヤ)は、ハワイや東南アジアのインドネシアやフィリピン周辺で生育しており、日本ではパンヤという名前でよく知られています。

木綿と同じように、種子を保護するために生えているコットンボールのようなものを繊維にします。

カポックは、種子毛繊維しゅしもうせんいと呼ばれ、綿花とは異なり、軽くたたくだけで繊維と種子が分離するので収穫が簡単です。

パンヤの単繊維は、長さ18mm〜27mm、太さが0.02mm程度で、繊維の断面は空洞になっているため、軽くてやわらかいという繊維の特徴があります。

ただ、木綿と違って天然りがなく、表面がなめらかので、紡績ぼうせきには向いていません。

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繊維内部の空洞に水が入りにくいという特徴もあるので、水に浮きやすく、救命用具の中綿として使われたり、弾力性や保温性にすぐれているので、枕やふとん、マットレスなどに用いられています。

パイナップル繊維(アナナス繊維)

パイナップルの葉っぱの葉脈を使った繊維で、繊維の長さは約5〜10cmほどです。

白色、もしくはやや黄色みを帯びた白色(象牙色)で、繊維は細いけれど強度があり、光沢感に富み、耐水性にすぐれています。

織物にする際は、加工次第でやわらかくも硬くもできます。主に、袋物や、テーブルクロスなどに使用されています。

フィリピンでは、パイナップルから採取した糸で織った「ピーニャ」と呼ばれる伝統的な織物があります。

ヤシ繊維

ヤシの実の殻からとれる繊維で、色はややくすんだ明るい茶色(肉桂色にっけいいろ)をしています。

繊維は硬いのでシワになりにくく、摩擦にも強いうえに、太陽光や温度の変化による変形や、変色、劣化等の変質を起こしにくい性質(耐候性)を持っています。

ラフィアヤシ

ラフィアヤシの葉っぱから採れる繊維は、かつて織物の素材としてアフリカで広く使われてきました。

マダガスカルとナイジェリアが原産国で、アフリカ中部や西アフリカの熱帯雨林の周辺にも生育するようです。

ラフィアヤシの葉っぱの長さは15mにまで育ちますが、繊維として利用するのは若葉のみです。

繊維の取り出し方としては、葉裏の柔らかい部分をナイフの刃で削るか手でむくかして、上面の表皮だけの状態にします。そうすると半透明の、繊維組織をとることができます。

繊維を天日干ししてから、手の爪や貝殻、あるいは専用のくしを使って細く裂き、長さ1メートルほどのしなやかな繊維の束にするのです。

ひもにしたり、柔らかくてチクチクしない織物となったり、皮革素材のように使えば使うほどしなやかになり、ツヤが出るのが特徴です。

芭蕉繊維

芭蕉繊維は、バショウ科の多年草、イトバショウの茎や葉の内側にある靭皮繊維じんぴせんいから繊維を採取できます。

沖縄県や奄美群島の地域で、芭蕉布ばしょうふと呼ばれる貴重な織物が織られてきました。

麻よりも硬いけれど、布自体は軽くて張りがあるので、夏物の着物地としても古くから愛用されてきました。

樹皮繊維である藤、葛、緒、芙蓉など

昔の人々は、藤、くず芙蓉ふようなど身近にある植物から繊維を取り出して利用してきました。

沖縄のオヒョウから作られるアツシ織り、静岡県の掛川市に古くから伝わる葛布、京都の丹後地方の藤布などが知られています。

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麻や木綿が普及していく前は、自然の木々や植物から皮をむいて繊維や布にしていたのが、ごく当たり前に行われていたのでしょう。

【参考文献】『21世紀へ、繊維がおもしろい』


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