鎌倉時代には、貨幣経済の成長とともに、染織品も商品として流通し始めます。
政治の実態が武家の手に移り、織物をつくる機業が官営から民営へと移っていき、染織品の生産形態が次第に変化していきます。
染料の販売や染色においても、それを独占する「座」が現れ、もっとも早く独立したのは紺屋・紺掻きでした。
鎌倉時代の染織品
鎌倉時代に作られたとされる染織遺品は極めて少なく、鎌倉にある鶴岡八幡宮に伝わる古神宝類の「五襲女衣」や「蟹牡丹文錦(伝護良親王御直垂)」などが挙げられます。
鎌倉時代の絵巻物である『春日権現験記(かすがごんげんけんき)』には、貴族をはじめ、当時の一般民衆の生活様式や服装、風俗などが細かく描かれており、日本の中世を知る貴重な歴史的資料とされています。
描かれている人々が着用している染織品からは、当時使用されていた模様(文様)も読み取ることができ、例えば桜の花びらをデザインした桜花文(おうかもん)やバラ(薔薇)の花びらなども描かれています。
平成16年から絵巻を後世に伝えていくため、保存修理が行われ、修理後にまとめられた資料「春日権現験記絵 -甦った鎌倉絵巻の名品」がPDFで公開されています。