井筒(いづつ)模様(文様)伊勢型紙

デザインにおける井筒(いづつ)


井筒いづつとは、井戸の地上部分の入り口を木や石で囲んだもので、本来は円形(筒形)のものを示したようですが、四角形のものも含まれています。

井筒いづつ模様は、古くから織りや家紋などのデザインに使用されてきました。

デザインにおける井筒(いづつ)

井筒いづつとほぼ同義で「井桁いげた」があり、井桁いげたとは、井戸の上部のふちを、地上で井の字形に組んだ木の囲いのことです。

下街道の古井戸

下街道の古井戸,井桁,Reeeeeeeeeeo, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons,Link

井戸は、掘ってからすぐ使用できるわけではなく、地面と同じ高さの井戸だった場合は、周囲の土やゴミが井戸の中に入ってしまわないように、井戸を掘ったら井桁いげた井筒いづつ)を組んで、地面より高い位置に井戸の入口を作る必要がありました。

井桁いげた井筒いづつ)があることで井戸にふたができるようになるため、人が井戸と気がつかずに落ちてしまうような事故を防ぐ目的もありました。

井筒いづつ井桁いげたは、古くから生活に欠かせない水源である井戸を守るその重要な役割から、家内安全の意味が込められる模様としても活用されるようになります。

井筒(いづつ)模様

井筒(いづつ)模様(文様)伊勢型紙

井筒(いづつ)模様(文様)伊勢型紙

紋章のデザインにおいて、一般的には井筒いづつは「井」が菱形に変形したもので、井桁いげたは「井」が正方形のものを表して区別しています。

井筒(いづつ)模様(文様)伊勢型紙

井筒(いづつ)模様(文様)伊勢型紙

幾何学文様のひとつとして、染色や織りの模様(文様)に用いられ、「井」の字のつく家系の紋章としても多く用いられてきました。

井筒(いづつ)模様(文様)伊勢型紙

井筒(いづつ)模様(文様)伊勢型紙

井桁(いげた)模様

井桁絣(いげたがすり),型染と併用した経緯絣

井桁絣(いげたがすり),型染と併用した経緯絣

4本の直線によって囲まれた正方形の幾何学的文様きかがくもんようである井桁いげた模様は、武将の間で家紋(井桁紋いげたもん)として使用されるようになります。

井桁紋いげたもんは、姓に「井」の字が付く家で多く用いられ、彦根藩ひこねはん藩主であった井伊直政いいなおまさ(1561年〜1602年)の家紋として有名です。

井伊家は、家で定められた定紋じょうもんであるたちばな紋とは別の紋 である替紋かえもんとして、井桁紋いげたもんを用いていました。

井伊家家紋,橘紋と井桁紋

井伊家家紋,橘紋と井桁紋,Gameposo, CC BY-SA 4.0 via Wikimedia Commons,Link

江戸時代後期から明治、大正、昭和の時代にかけて、庶民の間でとりわけ親しまれた織物にかすりがありますが、絣織物の基本柄の一つとして井桁いげた模様が人々から親しまれてきました。

井桁いげた模様に織り出されたかすりは、井桁絣いげたがすりとして人々に知られていました。

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