赤芽槲(久木)は、トウダイグサ科のアカメガシワ属で、学名はMallotus japonicusです。
赤芽槲(久木)は、新芽が赤いことから名付けられたもので、樹皮は灰褐色で若枝が赤褐色をしています。
日本においては、本州から沖縄まで生育し、台湾や中国の山野にも分布しており、成長すると10mを超える大木になます。
久木や、楸、比佐岐とも書かれ、これらは赤芽槲の古名として知られています。
朴や槲の葉っぱと同じように、大きな葉っぱに食物を盛る習慣があったと考えられています。
5月〜6月ごろに小さくて黄色い花が咲き、その後に実を付け、10月ごろに成熟し、種子は焦茶色をしています。
染色・草木染めにおける赤芽槲(久木)
後藤捷一・山川隆平(編)『染料植物譜』には、「染色広用方面の文献を見るに、実を赤色の染料。葉の煎汁を皀色の染料。高知にては葉乃皮を皀色材料。樹皮を染色剤。煎葉汁染皀色。果実より赤色染料を得。葉は又染料とす。種子を染料に用ふなどとあり、」とあります。
赤芽槲(久木)の朔果で染色すると、赤茶色を染められます。
赤芽槲(久木)は、赤色を染められるとされますが、昔の赤色は現在の赤色ではなく、広い意味での赤系統の色を含めて赤といったと考えられます。
正倉院の染紙の中に比佐木紙や比佐宜染紙があることから、当時、赤芽槲(久木)が染色に使用されていたことが考えられ、葉っぱが染色に用いられていたとされます。
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正倉院の赤芽槲(久木)で染められた紙は、黄茶色と考えられ、万葉集の時代にも一般的には黄茶色が染められていたと推測されます。
万葉集の中で詠われる赤芽槲(あかめがしわ)
万葉集の中で赤芽槲(久木)を詠んだ歌は、4首ありますが、染色に使用される茜と同じように染色に関係する歌はありません。
・ぬばたまの夜の更けゆけば久木生える清き河原に千鳥しば鳴く(925)
・去年咲きし久木合咲くいたづらに土にや落ちむ見る人なしに(1863)
・波の間ゆ見ゆる小島の浜久木久しくなりぬ君に逢はずして(2753)
・渡会の大川の辺の若久木我が久ならば妹恋ひむかも(3127)
【参考文献】『月刊染織α 1985年2月No.47』