芙蓉染(灰汁媒染)

染色・草木染めにおける芙蓉(ふよう)

シェアする

芙蓉ふよう(学名Hibiscus mutabilis)は、アオイ科フヨウ属の落葉低木らくようていぼくです。

夏から秋(7月〜10月頃)にかけて、薄紅色や白色の鮮やかな花を咲かせるため、庭木、公園樹あるいは街路樹として植栽されます。

朝咲いたら、夕方にはしぼんでしまう一日花いちにちばなですが、長期間にわたって毎日次々と開花していきます。

染色・草木染めにおける芙蓉(ふよう)

美しいピンクの大輪の花を咲かせる芙蓉(ふよう)

美しいピンクの大輪の花を咲かせる芙蓉(ふよう)

紙の製法が日本に伝えられたのは7世紀初頭とされ、紙の染色も古くから行われていました。

奈良時代(710年〜784年)には、装潢師そうこうしという人々が、書物を書き写すために使う和紙の染色や紙継ぎなどを職業としていましたが、染紙を染めた材料については「正倉院文書しょうそういんもんじょ」に記されており、芙蓉ふようの名前が付く色紙も含まれています。

正倉院文書、天平6年(734年)5月1日造拂所作物帳の中に、「一千四百十八張 比佐宜染(ひさぎぞめ) 二百五十七張 木芙蓉もくふよう芙蓉ふようの別名)染」とあります。

また、「採木 芙蓉胡桃皮ひさぎ葉等人功直并運車駄賃料銭一貫七百廿八文」とあります。

同じ年の写経目録にも「比佐木紙」とあり、当時は写経の用紙にひさぎの葉や芙蓉ふようの茎葉で染めた紙が使用されていたことがわかります。

染紙以外に、染色に利用された記録はありませんが、飛鳥時代から奈良時代にも布染めや糸染めに芙蓉ふようが使用されていた可能性も考えられます。

芙蓉ふようの花が咲き終わった後の茎葉を刻み染液として煮出し、木灰の灰汁あく媒染ばいせんで薄茶色になり、鉄分で黒染めできます。

古代の染め紙は無媒染ですが、これは紙料に灰汁のアルカリ分が含まれているために、灰汁の先媒染と同じ効果が得られていたと考えられます。

【参考文献】『月刊染織α1993年2月No.143』

シェアする

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です