エポレット(epaulet)とは?トレンチコートなどに見られる肩章(けんしょう)について


エポレット(epaulet/epaulette)とは、トレンチコートやカジュアルなジャケットなどに見られる肩章けんしょうのことで、肩線に取り付けた細くて平たい布を表します。

肩章けんしょうとは、制服や礼服などの肩の線に沿って装着される細長い布やモールなどでできた付属品で、官職や階級などを示す目印としての役割があります。

エポレット(epaulet)の語源

エポレットの語源は、印欧祖語いんおうそご(インド・ヨーロッパ語族の諸言語の共通の祖先とされる理論上の言語)の「spe-,sphe-(細長い板)」です。

ラテン語の「spatulam(細長い葉・へら)」から、古フランス語の「espaule(肩当て)」、フランス語の「epaulette(肩パッド・肩紐・肩章)」の意味を経由して、1783年に「肩章けんしょう」の意味で文献に初出しています。

エポレットという言葉は、主としてアメリカで使用され、一般的には「ショルダーボード」といわれます。

イギリスでは、比喩的な使われ方で、「ウィング(翼)」とも呼ばれます。

エポレットの歴史

エポレットのような肩当ては、14世紀の騎士が着用した甲冑装束かっちゅうしょうぞくの一つである鎖帷子くさりかたびらの「肩当て(ショルダーピースshoulder piece)」が始まりとされます。

これは戦闘の際に、敵が斬りつけてくる刀剣から身を守るために付属したものでした。

16世紀のヨーロッパのルネサンス時代に、男女の衣服は技巧(デザイン)を凝らすようになります。

そでを膨らませたり、途中でくびれたものなど極めて装飾的でした。

デザインや装飾に凝った結果、着脱が不便になったことからそでを別に仕立て、上部にひもをつけたそで身頃みごろの肩先(袖元)に結びつけたりしました。

その結び目(shoulder knot)を隠すために、肩先と身頃と共布や別布の装飾的な覆いをかけるようになったのです。

このような肩先を覆うものも、エポレットと言いました。

軍服に付くエポレット(肩章)

1762年、軍服に現在のようなエポレットを最初につけたのはフランス軍で、これ以後、各国の軍服に広まります。

機能性をもたらす目的としては、肩の保護と携帯する弾薬などを入れたカバンの吊り紐などを肩で固定するためでありましたが、これを利用して、徽章きしょう(階級章)にもしました。

肩章けんしょうは、上級者になるほど分厚く豪華なものになりました。

金糸(金モール)で覆い尽くした将官のものは、日本では「べた金」と言って「お偉い方」の意味に用いました。

日本における肩当(かたあて)

日本においては、衣類の肩を補強する点においては、「肩当かたあて」と呼ばれるものが活用されてきました。

単長着や襦袢じゅばんなどの肩裏に、補強のために肩当かたあてがつけられました。

平安時代末期から鎌倉時代にかけて、強装束こわしょうぞくの肩を張らせるために入れたクジラの髭(ヒゲ)や具足の方に当てる杏葉ぎょうよう肩当かたあてと言われました。


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