繊維におけるセルロース(cellulose)とは、天然の有機化合物のひとつで、植物に細胞(cell)として生成しています。
セルロースは、フランス人化学者であったアンセルム・ペイアン(1795年〜1871年)によって発見され、命名されました。
目次
繊維におけるセルロース(cellulose)
セルロース(cellulose)を持つ植物の一部をそのまま利用したものに、綿や麻に代表される天然繊維があります。
植物から採取したセルロースを化学的に再構築して繊維にしたものに、セルロース系繊維としての再生繊維(化学繊維)である「レーヨン」や「キュプラ」、「アセテート」、「トリアセテート」などがあります。
セルロースが主成分である繊維に表れる特徴
セルロースが主成分である繊維に表れる特徴としては、大きく5つほど挙げられます。
- 吸水性がある
- 水分を含むと、繊維が強くなる
- アルカリ性に強い
- 染色しやすく、発色が鮮やかで、堅牢度が高い染め物(堅牢染め)に適している
- 熱に強い
- 原料が天然素材のため、土に埋めると自然に分解される
その他にも、化学薬品に反応しやすかったり、防水加工ができる点などもセルロースが主成分となる繊維の特徴です。
木材パルプやコットンリッターのセルロースから作られる繊維
1892年、イギリス人によって木材パルプを原料にレーヨン(rayon)が発明され、これから人工的な繊維が実用的に使用されるようになりました。
レーヨンは、木材から取れるセルロースや、綿花を採取した後の種子の表面に付いて残っている2mm〜6mmほどの短い繊維で、紡績用には向かないコットンリンター(cotton linter)を溶かしてから固めて繊維状にしたものです。
レーヨン(Rayon)
20世紀前半は、「レーヨンの時代」と言ってもいいほど、レーヨンという繊維が台頭していました。
レーヨンはシルクに似せて作った再生繊維なので、昔は人絹とも呼ばれていたのです。
ポリエステル、ナイロン、アクリルの強度と比べてしまうと弱いですが、水分を含みやすく、光沢感があり、染色性が非常に良く、熱に強いなどの特徴があるので、それを生かしてある程度の市場規模をもっています。
人造絹糸というだけあって、染色後の美しさは化学繊維のなかでは抜群にすぐれています。
キュプラ(cupro)
キュプラは、紡績用には向かないコットンリンター(cotton linter)を原料に使用して作られる再生繊維です。
キュプラの製造方法は、コットンリンター(cotton linter)を「銅アンモニア溶液(キュプランモニウムソリューション)」で溶解させたものを糸に(紡糸)します。
キュプラ(cupro)という名前は、「カッパー=銅」の合成語要素である「キュプル=銅の」からきています。
銅アンモニア溶液で溶かして糸が作られるため、「銅」という意味の「キュプラ(正式には「銅アンモニアレーヨン)」と名付けられたのです。
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アセテート(Acetate)
レーヨンを化学的に改良したものに、アセテート繊維があります。
アセテート繊維は、レーヨンの主原料である木材パルプに、合成薬品の酢酸を化学的に作用させてつくった半合成繊維です。
植物繊維と合成繊維の両方の性質を併せ持っているアセテート繊維の特徴は、シルクのような光沢感とやわらかい感触に加えて、染色における発色の良さなどが挙げられます。
熱を加えても燃焼時における嫌な臭いが出にくいという性質があり、タバコのフィルターに活用されています。タバコの味を変えないためには、嫌な臭いが出にくいというのは非常に重要な点です。
引っ張ったり、摩擦などの外力に対しては、比較的弱いという性質もあります。
これまでも日本での生産は少ないですが、アメリカでは衣料品に大量に使われてきました。
トリアセテート(Triacetate)
アセテート繊維よりも酢酸が多く反応したものに、トリアセテート繊維があります。
トリアセテート繊維は、アセテート繊維よりも吸湿性が低く、耐熱性に優れています。
天然染料とセルロースの相性
綿や麻などの植物繊維と、シルク(絹)やウールなどの動物繊維は、繊維の性質が全く異なるため、染料の染まりやすさや薬品に対する性質が違います。
天然染料を使用した染色において、いわゆる植物を煮出して染める草木染めの場合はセルロースに染まりにくく、藍染はセルロースに染まりやすいという特徴があります。
グルコースが数多く結合したセルロースからできている木綿は、分子中に絹のようにイオン化する部分を持っていないため、煮出して染めるような草木染めで染まりにくい性質があります。
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