投稿者「iroai.jp」のアーカイブ

ハリスツイードの特徴と歴史。ハリスツイードとして認められる条件について

ハリスツイード(HarrisTweed)とは、スコットランドのアウター・ヘブリディーズ諸島で作られている伝統的な毛織物を意味します。

スコットランドの西側に浮かぶアウター・ヘブリディーズ諸島は、古くはロングアイランドと呼ばれ、非常に長い距離に渡って島々が点在しており、その中のルイス島(Lewis)とハリス島( Harris)がハリスツイードの故郷といえます。

北に位置する大きい島がルイス島で、南に位置する小さい島がハリス島であり、地理上では陸続きでつながっている一つの島ですが、通常二つの島と考えられています。

あえて人々が別名で呼んでいたのは、ハリス島は岩山が連なり木々が少ないなど、二つの島の環境が非常に異なっていたためです。
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酸化鉄から作る絵具、花赤と有馬温泉で染める湯染木綿

江戸時代に作り出された絵具えのぐに、「花赤はなあか」というものがありました。

今では有馬の辻絵具店だけでしか、製造されていない花赤はなあかですが、作り方は大変興味深いものです。

江戸時代に作り出された絵具である花赤

花赤はなあかは、酸化鉄を水につけ、毎日その上澄み液を捨てるという作業を繰り返すこと約10年かけてできます。

花赤はなあかについては、下記の記事が良くまとまっています。

参照:人間国宝の愛した「花赤」という絵具

酸化鉄で色を染める

有馬ありまでは、湯染木綿という名前で、温泉の湯を利用して木綿布を染めたものが土産として売られていました。

有馬の湯染木綿

温泉で染めるのは、有馬温泉だけの産物ではなく、赤い湯といわれる赤褐色せっかっしょくに濁った酸化鉄を含む温泉であればどこでも染められるものです。

群馬県の伊香保いかほ温泉などでも、大正10年(1921年)頃まで、温泉で染めた浴衣や手拭いなどが売られていたようです。

湯染木綿の発祥がいつなのかは不明ですが、明治15年(1882年)の『湯山町輸出入物品概表』には、「湯染木綿15反15円」とあり、この頃には有馬(湯山町とは、有馬の旧地名)において湯染木綿が作られていたのがわかります。

湯染木綿が有馬土産として作られていたのは、昭和初期までとされています。

かえでの葉っぱを使用し、たたき染めで模様を表現したりもしていたようです。

【参考文献】『月刊染織α 1983年No.31』

染色における顔料と染料の違いと特徴。顔料を意味する言葉の歴史について

顔料(pigment)と染料(dye)という言葉がありますが、その意味の違いや特徴はどのようなものでしょうか。

染色における顔料と染料の違い

現代における染料と顔料の違いと、言葉を使い分ける基準はどのようになっているのか。

上村六郎氏の『東方染色文化研究』では、染料と顔料について以下のように書いてあります。

染料とは一般に布帛ふはくに染著(染着)する性質を有するものを指し、顔料とは布帛ふはくに染著(染着)しない性質のもとを指している。従って別な云い方をすれば、染料とは色染に使用するものであり、顔料とは(絵)又は彫刻其他そのほかのものの彩色に使用するものである。

上記では、染料は織物などを染めるものであり、顔料は絵や彫刻などに色付けするものと言っています。

上村六郎氏の説明から読み取れることは、染料、顔料という呼び名は、その使い方と性質によって区別できるということがわかります。

染料と顔料の性質の違いとしては、物質を溶かすのに用いる水やアルコールなどの液体(溶剤)に溶ける色を染料、溶けないものを顔料として区別できます。

分子で染めるのが染料での染色で、粒子で染めるのが顔料による染色というイメージをするとわかりやすいです。

顔料と染料の違いを理解することが生活に役立つ

染色をする際は、顔料と染料の特徴を踏まえたうえで、用途によってうまく使い分けることが必要です。

染められたものを消費する側に立ったときでも、それぞれの特徴や違いを理解しておくことが大切なのです。

例えば、顔料をつかって染色された衣類などは、ムラになりやすかったり色落ちしやすいので、扱い方をきちんと認識しておくことで、そもそも色落ちを楽しめたり、色が落ちても変にがっかりしなくて済みます。

顔料と染料の違いというのは、なんとなくわかっているようだけれど、改めてしっかりと理解していると生活に役に立つことがあるのです。

顔料と染料の特徴

顔料と染料は、染め方や染まり方が違うため、それぞれ違った特徴や性質を持ちます。

顔料

顔料はそれ単体では、繊維と結びつくことができないので、(素材の表面にくっつくことができない)樹脂やタンパク質、オイルなどで固着させます。

昔から友禅染では、大豆をすりつぶして水を加えた呉汁ごじるをつかって、色止めをしたりしています。

その他、顔料の特徴としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 太陽光やライトの光によって色落ちしにくい(日光堅牢度が高い)
  • こすったりすると色落ちしやすい(摩擦堅牢度が低い)
  • 顔料が細かい粒状になっているため、染めた布が重くなる
  • 色を混ぜるとムラになりやすい

顔料は、無機顔料や有機顔料に区別することができます。

無機顔料は、鉱物顔料とも言われており、日本においては化粧の原点とも言われる赤化粧には、酸化鉄を含む天然の鉱物が使用されていました。

無機顔料は、現代では化学的に合成されたもので、安全性高く、多くの生活日用品に使用されています。

有機顔料は、石油などから合成した顔料です。

染料

染料はそれ単体で、科学的に繊維と結びつくことができます。

染料の特徴としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 太陽光やライトの光によって色落ちしやすい(日光堅牢度が低い)
  • 顔料に比べると、こすったりしても色落ちしやすい(摩擦堅牢度が高い)
  • 色を混ぜてもムラになりにくい

顔料を意味する言葉と歴史

顔料という言葉は一般的に定着していますが、実は、何度も変化を繰り返しながら今のようになっていった歴史があります。

日本において、顔料という言葉を意味する古い表現として、「彩色」「彩色物」「彩色料」などが挙げられます。『日本書紀』 では、「彩色しみのもののいろ」という言葉が出てきます。

顔料という言葉のルーツは中国にあるとされますが、中国は支那の古い名称では、丹青たんせい、または青黄といったものがあります。

938年頃、平安時代中期に作られた辞書である倭名類聚抄わみょうるいじゅしょうでは、染料は「染色具」と呼ばれ、顔料のことは「圖繪具ずえぐ」と呼ばれていました。

鶴田榮一氏の「顔料を意味するいろいろの用語とその変遷」には、顔料という言葉を巡る歴史がわかりやすくまとめられています。

下記の図は、「顔料を意味するいろいろの用語とその変遷」からの引用です。

彩色に始まり、丹青、丹、色料、彩色、絵具などと顔料を表す言葉がさまざま存在していたことがわかります。

顔料を意味する用語は、「エノグ」と訓読されていましたが、その一覧が「顔料を意味するいろいろの用語とその変遷」にはあります。

江戸時代には漢字表示の用語として、「顔料」と書かれたものがありましたが、それも「ガンリョウ」ではなく、「エノグ」 と訓読されていたようです。

明治時代になり、近代化された顔料を製造する企業が出てきますが、江戸時代と同じように顔料は「絵具」であり、顔料ガンリョウへの移行は進みませんでした。

その後、明治40年(1907年)に政府公式の文章で初めて今日と同じ顔料ガンリョウという用語が使われるようになりました。

【参考文献】「顔料を意味するいろいろの用語とその変遷

不織布(ふしょくふ)とは。不織布の歴史や特徴、用途について

新型コロナウィルスの世界的大流行によって、一時は万人にとってマスクが日常生活に欠かせないものになりました。

2020年1月、日本においても感染が出始めた頃、瞬く間にマスクが品切れで購入できない事態となったことは記憶にあたらしいです。

そんななか、販売されているマスクのほとんどが不織布ふしょくふ(non‐woven fabric)という素材でできていることを知ったという人も、多くいたのではないでしょうか。

不織布ふしょくふとはどのような特徴があり、どのような用途で活用されているのでしょうか。 続きを読む

染色における堰出し型(せきだしがた)と地白型について

堰出せきだしとは、柄の外部分をのりで伏せて、柄部分をを手挿てざしや刷毛はけで染め上げる京友禅の技法を表す言葉です。

堰出せきだし型は、白抜き型のように模様自体が白く抜ける型ではなく、模様の部分の周りにのりを置くので、地が白くなり、模様部分を染めることになります。

白抜き型であれば、模様部分を彫っていけばいいのですが、堰出せきだし型では模様部分の周りを彫り、模様の形を彫り残します。

地白型(堰出し型) ,型紙

地白型(堰出し型) ,型紙,Metropolitan Museum of Art, CC0, via Wikimedia Commons,Link

型紙としては不安定な型になるので、堰出せきだし型では「つなぎ(吊り)」が必要になってきます。 続きを読む

織物・生地の地の目を正しく読む方法

織物は、経糸と緯糸から組織されていますが、経糸と緯糸の方向を「の目」と言います。

緯糸は織物の「みみ」に対して、平行にはしっています。

経糸の方向を「経の地の目」といい、経の地の目を横切ってはしる糸の方向を「緯の地の目」といいます。 続きを読む

染色・草木染めにおける野薔薇(ノイバラ)。薬用効果について

野薔薇のいばら野茨のいばら)(学名Rosa multiflora)は、野生のバラにおける代表的な品種です。

花屋などで観賞用として売られているバラの原種の一つであり、野薔薇のいばらから数々の品種が作り出されてきました。

英語のRosaはラテン語のRosaに由来し、バラ属(Rosa)に属するものは非常に多く、さまざまな種類を含んでいます。

multifloraは、花が房状に咲くことから、ラテン語で「花が多い」を意味します。 続きを読む

大島紬(おおしまつむぎ)

染色・草木染めにおける車輪梅(しゃりんばい)。泥染に活用される車輪梅について

車輪梅しゃりんばいは、日本においては九州南部に自生しているものが多く、特に奄美大島ではテーチキ、テカチキと呼ばれ、大島紬おおしまつむぎにおける染料植物として有名です。

車輪梅しゃりんばいは、2〜4mほどのバラ科の常緑樹で、名前の由来は、葉っぱが枝先に車輪状に付き、4月から5月ごろにウメに似た白色の花がウメにが、円すい状に集まって開花しすることから命名されました。

ツバキ科モッコク属に分類される木斛モッコクの葉っぱに似ているところから、ハマモッコクとも呼ばれたりします。

樹皮や樹木、根っこから作られた染料が、大島紬おおしまつむぎ泥染どろぞめに使われることで知られている車輪梅しゃりんばいについて紹介します。 続きを読む

信念や哲学を持ったものづくりでないと、それはただの量産品になる。

ものづくりと一口にいっても、世の中にはさまざまなものづくりがあります。

低価格で、大量にものをつくるのであれば、機械に頼ったものづくりになります。

いわゆる量産品ですが、これがものづくり産業の大部分を占めています。

一方で、価格は高いし、数をつくれないものづくりもあります。それは、人の手作業が必要となるものづくりです。

価格と生産量において機械には太刀打ちできない、後者のものづくりの利点とはなんでしょうか。

個人的には、手作業であるからこその非効率の価値があると考えています。 続きを読む

人の手がかかるものづくりには非効率の価値があるから、その他の作業をできるだけ効率化するべき。

ものづくりの分野、とりわけ全ての工程を機械やロボットで完結するのではなく、人の手が必要とされる手仕事などは、非効率にみえる作業部分が多くあります。

手仕事においては、人の手が必要な非効率な部分こそが、大きな価値として評価される点でもあるのです。手仕事の手のかかる部分に、しっかりと時間を割くということは言うまでもありません。

ただ、分野にもよりますが、なかなか手仕事でご飯を食べていくのは難しいところです。なぜなら、手仕事であるため、投下した時間に対する生産量に限りがあるからです。

限りがあるなかでどうやって、利益を効率よく出すことができるかを考える第一歩として、まずは手をかける作業以外の工程を徹底的に効率化する意識を持つことが大事だと思います。

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