網織とは、「網糸織り」や「網紬」などとも呼ばれ、使い古された漁網の糸を緯糸にして織り込んだ織物を表します。
網織(あみおり)とは?
網織は、滋賀県の湖北地方の浅井町がその生産で知られていました。
この地域は、雪深く、人々は冬のあいだ閉ざされた家の中で、機織りをしたといわれます。
古くは養蚕が盛んで、自家用の紬などが織られていました。
その養蚕の工程の際に出てくるくず繭から紡ぐ糸に、使い古された漁網の糸を組み合わせて、織物を作るというアイデアが古くに生まれたのです。
かつて、淡水漁業に用いられていた漁網は絹糸でできており、使い古された漁網が織物に転用されるのは、琵琶湖周辺だけではく、全国でも行われていたとも考えられます。
実際に、岐阜県の生櫛村というところでは、経糸に絹糸を、緯糸に絹の漁網糸を用いて織られた「生櫛織」と呼ばれるものがあったと伝えられています。
網織の原料は、漁業で使い古された漁網の絹糸です。
近年では、もっぱら合成繊維でできた網が使用されているため漁網を織物に用いることはできませんが、以前にわざわざ網織用の絹網を、業者に依頼して作ったことがあったようです。
網織は、昔は主に男物として、茶人などに愛用されました。
網織(あみおり)の技法
漁網を横方向に束ねて揃え、結び目を2つおきに切断します。
束を解いて広げると、「V形のヒゲ」を等間隔につけた糸ができます。
これを機結び(一重継ぎ)につなぎ、1本の糸にしてクダに巻きます。
白生地が主に織られますが、昔の綱糸のように、糸は柿渋で時間をかけて染められました。
経糸は絹の紡ぎ糸を用い、緯糸に網糸を用いて製織されました。
織り機は、木製足踏機といって、踏木を足で踏んで杼(シャトル)を飛ばす装置のある織機(おりき)を使って織り上げられました。